トランプ米大統領は一般教書演説で、好調な経済を成果として、インフラ整備や米軍の強化など今後の政権運営の目玉政策を訴えた。「強い米国」を使命とするトランプ氏は、民主党や反トランプ派の国民に対して「私たちは一つのチーム、一つの国民、一つの家族だ」と国民和解を呼び掛けた。

 しかし、こうした表面的な発言の一方で、今年秋の中間選挙、さらには2020年の大統領再選をにらんだ支持率維持のための国民を分断するような言動をトランプ氏は依然続けている。一般教書の和解のトーンは容易には信じられない。

 トランプ氏の一般教書演説は「米国第一主義」が貫かれた。

 対外政策では北朝鮮に「最大限の圧力」をかけ続けると宣言し、イランなど「敵対国家」との対決姿勢を強調した。核戦力の近代化を宣言し「いかなる侵略行為も抑止する」と述べ、オバマ前政権時代の「核なき世界」の模索とは一変した。看過できない事態だ。

 テロ対策でも、人権面で問題が多く国際的に閉鎖要求が強いグアンタナモのテロ容疑者収容施設を維持すると語った。中国とロシアを「米国に挑むライバル」と呼んだほか、不公平貿易の是正、知的財産権の保護に執念を燃やし、米国民を守る「米国第一主義」を色濃く訴えた。世界での責任を軽視する極めて米国本位の世界戦略である。

 国内政策では、製造業の米国回帰や雇用創出などの経済保護主義とともに、ヒスパニック系のギャング組織の撲滅、移民対策の強化、薬物依存の解消など「法と秩序」を訴えており、米国民の安全意識に訴えての国民生活防衛を打ち出した。

 問題は、こうした「米国第一主義」の手法が、新たな移民や外国人、少数派を「他者」として扱い、伝統的な米国人である「われわれ」から排除するという分断をさらに深めることだ。

 また対外的には米国と相違を抱える国を「ライバル」「敵対者」と一方的に位置付ければ、外交の幅を狭め、対立、軍事的緊張を深めてしまう。

 インフラ整備や安全保障だけでなく、経済格差の解消、多数派と少数派の対立、移民問題など、米国の抱える課題は多いが、トランプ政権の誕生以来、国民の分断はかつてなく深まり、それらの課題解決に向けた環境は整っていない。

 一般教書演説では、トランプ氏が自らの発言を自賛するように拍手し、共和党議員が立ち上がって呼応した。一方、民主党議員の方は椅子に座り押し黙ったままという場面が多かった。これでは国民和解とは言えない。

 トランプ氏の支持率はこの時期の大統領としては戦後最低レベルだが、共和党支持層の間では8割を超え、民主党支持層の間では1桁という極端な分極化である。世論調査では6割の人がトランプ氏の登場以来、米国の人種問題は悪化したと答えている。

 責任の一端はトランプ氏にある。トランプ氏は今後の選挙戦で「われわれ」である白人を支持基盤として戦う意向とみられる。白人至上主義に親近感を感じさせる言動はその象徴である。

 しかしトランプ氏が最優先に取り組むべきは、米国民が「一つの家族」であることを言動で示すことだ。まずはツイッターをはじめとする侮蔑発言をやめてほしい。(共同通信・杉田弘毅)

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