その振り子時計は「11時2分」から、2度と動くことはない。長崎市の原爆資料館。あの日、爆心地から800メートルの民家で使われていた。止まったままの針を見つめていると、いきなり日常を断ちきられた人々がどれほど無念だったろうかと胸をつかれる◆人類滅亡の日までの残り時間を示す「終末時計」の方は、また進んでしまった。米誌が国際情勢を分析して、毎年発表しているが、私たちに残された時間は、たった「2分」。ここまで緊迫したのは、過去に1度だけしかない。米ソが水爆開発を進め、核戦争が現実味を帯びた1953年である◆冷戦終結を受け、91年には「残り17分」まで針は戻されていた。その後、インドやパキスタンが核保有へと走り、拡散するテロの脅威も加わって、人類の残り時間は少しずつ削り取られてきた◆ふたたび残り2分まで迫った原因は、北朝鮮である。米国のリーダーがトランプ氏になったのも大きい。北朝鮮側が「核のボタンが私の事務室の机上に」と言い放てば、自分の方が「はるかに大きくて、はるかに強力だ」と応じる。飛び交う言葉は、いかにも危うい◆迫り来る危機に、国際NGO「ICAN」をはじめ、各国は禁止条約の発効へと急ぐ。唯一の被爆国である日本が煮え切らないのは残念だが、世界の声はひとつ、「時計の針を戻せ」―。(史)

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