短期肥育で育てられている肉牛=武雄市山内町の佐賀県畜産試験場

 佐賀県畜産試験場(武雄市山内町)が、通常は30カ月の肉牛の出荷月齢を27カ月に短縮する「短期肥育」の実証研究を行い、肉質、肉量とも高いレベルの牛が育つことを確認した。1年間の出荷頭数を1割超増やすことが可能になり、飼料も減るなど肥育農家の経営効率改善も期待できる。成果や手法を周知し、導入を促進したい。

 牛は通常、繁殖農家が出産から9カ月間、肥育農家が21カ月程度育てて出荷する。県畜産試験場は(1)肥育開始月齢を9カ月から6カ月に早める(早期開始)(2)21カ月の肥育期間を18カ月に短縮する(期間短縮)―という二つの短期肥育法で6頭ずつ育てた。

 短期肥育した牛の肉量や肉質を、通常の方法で肥育した牛と比較したところ、短期肥育の格付けは全頭A5で、霜降り度合いも県平均の7・1に対し、11・0と高かった。肉量では、枝肉重量は県平均490・5キロに対し、早期開始が508・3キロ、期間短縮が483キロ。肉量では優劣が出る一方、肉質の高さは際立っていた。

 短期飼育の利点は以前からいわれていたが、実証例が少ないことや、牛が高額で農家での実験的取り組みが難しいことなどで導入の動きは鈍かった。今回は比較的多い頭数で検証できたうえ、多くの県内農家が使う飼料を使ったことで関係者の関心が高まっている。1月初めの報道を受け、試験場には「視察に来たい」「詳細が知りたい」などの問い合わせがあり、子牛のセリ市など関係者が集まる場でも話題になっているという。

 注目される背景には、子牛の取引価格上昇など肥育農家の経営環境の厳しさもある。佐賀中央家畜市場の黒毛和種子牛1頭の取引平均価格をみると、2008年ごろから5年間ぐらいは35万~45万円で推移したが、13年から上昇し、17年前半は80万円台後半まで上がった。その後は70万円台に下がったが、この5年で2倍近く上昇したことになる。

 短期肥育の導入は、こうした経営環境の改善につながる可能性がある。肥育期間が短くなることで年間の出荷頭数が増える。県内の平均農家(170頭肥育)で試算すると、現状の30カ月肥育の93頭が、短期肥育によって15頭増(16・1%増)の108頭になる。使う飼料の全体量も減っており、出荷は増え、飼料代は減って経営効率改善につながる。

 利点は多く、関心も高いが、実際に農家が導入に踏み切るかは未知数だ。講習会などさまざまな形で周知を工夫し、疑問解決や不安払拭が必要だろう。導入時のサポートも欠かせない。肥育開始を早める手法では繁殖農家と肥育農家の連携も必要だ。繁殖も肥育も行う「一貫経営」の推進にもつなげたい。(小野靖久)

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