法相の諮問機関である法制審議会の部会が民法改正の要綱案を取りまとめた。遺産に含まれる家について所有権とは別に、残された配偶者がそれまで通り住み続けられるよう「居住権」を新設するのが大きな柱だ。結婚して20年以上の配偶者が生前贈与や遺言により受け継いだ家を遺産分割の対象から除外できることも盛り込まれている。家を除いた分、それ以外の預貯金などを多く相続できる。高齢化が進む中、夫婦の一方が亡くなった後に配偶者が住む場所や生活費に困らないようにする狙いがある。相続分野の大幅な見直しは約40年ぶりとなり、法制審は近く上川陽子法相に答申。政府は今国会に民法改正案を提出する。

 そもそものきっかけは、2013年の最高裁決定だった。結婚していない男女間の「婚外子」の遺産相続分を、法律上の夫婦がもうけた「嫡出子」の半分とする民法の規定を違憲と判断した。規定を削除する改正民法がその年のうちに成立したが、法律婚を手厚く保護すべきだとの声が自民党などから上がり、15年に当時も法相だった上川氏が法制審に諮問した。

 要綱案は時代に即した内容といえるが、事実婚は対象にならない。法律婚と同様に夫婦の実態があるのなら、同じ扱いをしない理由を見いだすのは難しいだろう。同性カップルなども含め、家族の在り方は多様化しており、それに対応した見直しも求められよう。

 要綱案によると、居住権には、連れ合いと死別した配偶者がいきなり退去を迫られないよう一時的に保護するための短期居住権と、配偶者の希望により遺産分割の協議や家庭裁判所の審判などを経て認められる「終身または一定期間」に及ぶ長期の居住権がある。居住権を設定すれば、所有者が変わっても住める。

 配偶者が居住権を、子どもが所有権を取得した場合を考えてみると、配偶者の遺産取り分は原則全体の2分の1だが、家については土地・建物の評価額より安い居住権だけを相続することになるから、その分、預貯金などを多く受け取れる。

 結婚して20年以上の夫婦に限り、家を遺産分割の計算から除外する仕組みも合わせると、配偶者が評価額の高い家を相続したため、手にできる預貯金などが少なくなり、結局は家を手放さざるを得なくなるようなことにはならないとされる。

 ほかに相続人以外の親族が故人の看護などをした場合、一定の要件を満たせば相続人に金銭を請求できる制度も要綱案には盛り込まれた。例えば、義父母を介護してきた息子の妻が該当する。

 いずれも高齢化社会に対応するために必要な方策であることは間違いない。だが事実婚に、こうした恩恵は及ばない。女性を中心に、結婚を境に姓が変わり、旧姓で築いた仕事上の関係に影響が出るのを避けたいといった理由から事実婚を選ぶ人が増えている。このため、夫婦同姓を定めた民法の規定は憲法違反とする訴えが相次いだが、15年の最高裁判決は「合憲」との判断を示した。

 選択的な夫婦別姓制度の法整備は一向に進まない。そんな中で長年、法律婚と同様に互いに支え合っても、扱いが異なるのは妥当だろうか。同性カップルを巡る法整備も置き去りのままだ。家族の多様化と法制度との間にある溝を埋める手だてを考える必要がある。(共同通信・堤秀司)

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