〈うなぎ、北の海の/人魚、バルト海を離れ/われらの海へやってくる/われらの河口へ、河から川へ/深みを遡(さかのぼ)り…〉。イタリアの大詩人、エウジェーニオ・モンターレ(1896~1981年)の傑作詩「うなぎ」の一節である◆こんな詩があるぐらいに、イタリアではウナギを古代ローマの時代から食していた。養殖の歴史もそのころに遡るようで、日本よりはるかに長い。日本では明治12年、服部倉治郎という人が東京・深川に養殖池を造ったのが最初との説が有力だ◆ニホンウナギはマリアナ諸島西方海域で卵を産み、ふ化した稚魚は、成長しながら黒潮に乗って11月から翌年4月ごろに日本の沿岸にたどり着く。養殖に使われるこのシラスウナギと呼ばれる稚魚が不漁だという。川に上る直前で捕るが、前の漁期の同じころに比べ1%ほどしか漁獲量がない◆このままでは品薄になり、今年の「土用丑(うし)の日」に食べる蒲(かば)焼きの値は、まさにうなぎ上りとなりそうで、やれやれである。乱獲や河川環境の悪化は以前からいわれていて、今冬は黒潮の「大蛇行」が発生。稚魚がうまく来遊できなかった可能性もある◆日本は世界で最もウナギを好む国。全体の7割ほどを消費する。まだ、稚魚の漁期は残されている。「どうか今年もおいしいウナギが食べられますように」と願うばかりだ。(章)

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