県立博物館に所蔵されている『葉隠』(鹿島本)。現代でも参考になる言葉が多く記されている。

 明治維新150年を迎え、佐賀県は維新期に佐賀藩士たちの間で広く読まれた、鍋島侍としての生き方を説く『葉隠』にスポットを当てる。有名な「武士道と云(い)うは、死ぬことと見付けたり」は戦時下、本意とは違う戦意高揚に使われるなど“時代の風”によってさまざまな読まれ方をしてきた。県立佐賀城本丸歴史館の藤井祐介学芸員に解説してもらいながら、現代ならサラリーマンの羅針盤として読むことができる葉隠の言葉を探してみた。

 【少々は見のがし聞きのがしある故(ゆえ)に、下々は安穏なるなり】上司は完璧であるべきか。ミスを許さない姿勢だと部下は働きにくいもの。上に立つ人間のあり方を説いている。

 【よき事も過ぐるは悪(あ)し。談義・説法・教訓なども、言ひ過ごせば害になり候(そうろう)となり】どんなにいい話でも、長くだらだらと言い過ぎれば、逆に部下には聞いてもらえない。

 【大方呑(の)むばかりなり。酒といふ物は打上り綺麗にしてこそ酒にてあれ】悪酔いをして恥をかいてはならないということ。

 【少し知りたる事、知りだてをするなり】つい知ったかぶりをして自慢げに話してしまうことがあるが、ちょっと指摘されるとあたふたしてしまう。本当によく知っていることは、奥ゆかしく、あまり話さない。

 【さもなきことを念を入れて委(くわ)しく語る人には、多分その裏に申し分があるものなり】長々と言葉を多くして話していることには、何か裏がある。

 【大事の思案は軽くすべし、小事の思案は重くすべし】日頃から心掛けて鍛錬を積んでおけば、大きな出来事が起きたときに慌てることなく対応できる。逆に日頃からよく起こる小さな出来事には、慎重に取り組むことが肝要だ。

 【人が黒きと云はば黒き筈(はず)ではなし、白き筈なり。白き理があるべし】人が黒と言えば「黒いはずはない。白い道理があるはずだ」と考えてみる。人の意見をうのみにせず、常識や通例から脱却して違う視点で考えてみることで、新たな理屈が見えてきて、抜きんでた仕事につながる。

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 藤井学芸員は葉隠の言葉を「根底にある究極の奉公は主人への『諫言(かんげん)』。しかし、なかなかできることではないので日頃からの覚悟を説いている」と解説する。現代に置き換えれば実用書のような読み方もできると説明し、「今の時代をよりよく生きていくため、未来に向けて自分なりに言葉を受け止めてほしい」と話す。

 県は3月17日に開幕する「肥前さが幕末維新博覧会」で、佐賀市の旧三省銀行に「葉隠みらい館」を開設する。ゲーム感覚でいくつかの質問に答えながら、その人に合った日常生活に役立つ葉隠の言葉を紹介する企画も予定している。

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