県が業者向けに開いた電子決済導入の説明会=昨年6月、佐賀市

 電子マネーの利用が国内で伸びている。加えて、アジアで急速に普及が進むスマートフォンを使ったモバイル決済への対応も活発になってきた。2020年には東京五輪を控え、電子決済の普及はさらに加速するだろう。日常生活で現金を使わない「キャッシュレス時代」が本格的に到来する。

 日本銀行の決済動向調査によると、電子マネーの決済金額は2016年、初めて年間5兆円を超えた(前年比10・8%増)。件数も前年比11%増の51億9200万件に上る。交通系電子マネーの保有や利用が広まったのに加え、16年は特に、米アップルの決済サービスが、国内で使えるようになったことも後押しになったようだ。

 電子決済インフラが整った都会に行けば、余計に恩恵に浴することができる。例えば電車。これまでは自動券売機の前で複雑な路線図とにらめっこして行く先や運賃を確認し、金額を投入して乗車券を買っていた。今はカードか、スマートフォンやスマートウオッチに対応アプリをインストールして現金をチャージしておけば、自動改札にかざすだけで乗降できる。時間短縮効果は絶大だ。

 もちろんコンビニでの買い物や飲食店でも利用できる。1円単位で財布から小銭を取り出す煩わしさから解放され、釣り銭を受け取る手間が省け、レジも混まない。現金は落としたり盗まれたりすれば手元に戻る可能性は低いが、スマホやカードなら紛失や盗難に遭ってもロックがかかっていたり、利用停止措置を速やかにとったりすれば被害を回避できる。

 便利な電子決済だが、アジアの近隣諸国と比べると、普及にはまだまだ大きな差がある。日本クレジット協会の15年版統計によると、電子決済率は日本が18%に対し、韓国は85%にも上る。モバイル決済の利用率について各国の調査報告をみると、日本が17年の日銀調査で6%だったのに対し、中国は98・3%という驚くべき数字が公表されている。

 この差は、経済活性化に対応できなくなるという意味で看過できない数値だ。端的に言えばインバウンド対策。佐賀県にも中国や韓国、タイなどからの観光客が多くなっている。だが、佐賀は総務省の14年商業統計によると、クレジット利用決済率が7・9%。47都道府県中最下位で、全国平均14・5%のほぼ半数にとどまる。

 県は昨年から、佐賀市と嬉野市をモデル地区に、観光や商工団体を対象に電子決済端末機の導入補助などに着手し、インフラ整備を後押ししている。電子決済への対応が不十分なままでは、観光戦略を進める上で大きな機会損失となるだけに、啓発活動なども通じ、県内での利用拡大をさらに強力に推し進めてもらいたい。(森本貴彦)

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