農林水産大臣賞に輝いた伊万里グリーンファームの前田清浩さん。6次産業化にもいち早く取り組み、経営の安定を図っている=伊万里市

佐賀新聞社賞を受賞した木下重信さんと寿子さん。高品質のスイートピーを生産し、産地のリーダーとして技術向上に力を入れる=杵島郡白石町

 意欲的に技術や経営の改善に取り組み、地域農業の振興に貢献している個人・団体を表彰する「佐賀農業賞」。本年度は16の個人、団体が受賞した。「先進的農業経営者」「若い農業経営者」「組織・集団」の各部門ごとに3回に分け、最優秀賞と特別賞受賞者の取り組みを紹介する。

【最優秀・農林水産大臣賞】

伊万里グリーンファーム・前田清浩さん(伊万里市)

ロス減らして経営安定

 「目標は継続できる農業経営」と力を込める。小ネギの生産、加工を手がける伊万里グリーンファーム代表取締役の前田清浩さん(57)は、目の前の課題を一つずつ解決しながら経営を安定させてきた。

 地元の金融機関で10年間働いた後、父の病気をきっかけに28歳で実家のネギ農家を継いだ。現在の5分の1程度だった栽培面積を2・4ヘクタールまで拡大し、法人化を進めた。1997年にはネギの自動皮むき機を県内で初めて導入。作業の平準化と効率化を図った。

 経営を安定させるため、直販を強化して販売先の多様化を進めた。曲がったり、根っこが切れたりして、そのままの状態では出荷できない「規格外」のネギを有効活用し、2003年からカット野菜として販売。鮮度の高さから人気を集めた。

 6次産業化にもいち早く取り組み、06年に加工施設を整備して長期保存が可能な乾燥ネギも販売した。生鮮、カットネギ、加工品の3部門の販売システムを構築し、ロスを減らして売り上げに結びつけてきた。

 昨年4月には、食品衛生管理の手続きを定めた国際基準「HACCP」の認証を想定した新工場を市内に建設。衛生管理を徹底しながら、安定して供給できる体制を整えた。

 堅調な需要に対応するため、地元農家からもネギを調達。加工や直販の経験を生かし、JAと連携して特産の伊万里梨を使った商品開発も支援する。「農業は地域との連携が不可欠。自分だけでは成り立たない」。実感を込めて語る。

 

【優秀・佐賀新聞社賞】

スイートピー栽培、木下重信さん寿子さん(白石町)

高品質、全国屈指の出荷量

 杵島郡白石町でスイートピーを栽培する木下重信さん(57)・寿子さん(58)夫妻。県外の大産地にも負けない高品質の切り花を生産し、市場から高い評価を得ている。10アールから始めた栽培面積は140アールにまで拡大。年間出荷量は350万本と全国屈指の規模を誇るようになった。

 建設会社社員だった重信さんは28歳で実家の農家を継いだ。当時、花業界が伸びていることに目をつけ、就農とともに、人気歌手のヒット曲でも知られるスイートピーの栽培を始めた。

 1年目は順調だったが、2年目に壁にぶつかった。樹勢が極端に悪化。「今考えれば温度が高かったからだろうけど、とにかく何も分からなかった」と重信さん。研究の第一人者・井上知昭東農大教授に電話し、翌日にはキャンパスのある神奈川県へ向かい教えを請うた。以来、一緒に海外視察したり、本の出版に協力したりする付き合いだ。

 花弁が厚くて輪数が多い「宿根スイートピー」の栽培技術をいち早く確立。経営分析もしっかり行い、雇用を増やしながらバランスよく規模を拡大してきた。

 ライフスタイルの変化もあり、花の市場規模は年々縮小。県内のスイートピー農家も一時期の半分ほどに減った。「長く同じ品目を作ってこられたことには自信を持っている」と重信さん。箱根ランナーとして名をはせた長男の潤哉さん(28)が実業団を辞め、3年前に帰郷。「息子が跡を継いでくれるのは農家にとって一番の喜び」と話す。

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