親になると、子供が早く自立して、自分で稼いで一人前に食べていけるようになってほしいと望む人は多いでしょう。しかし、子供に不幸(精神的な病気、トラウマ、両親の不和や離婚など)が生じると、自分の力で生きていくことができなくなり、親に頼らざるを得ません。いろんな方法で心理的、経済的に援助する方法はありますが、やはり親の本音としては、子供が親への依存から離れて自立へと向かってほしいのではないでしょうか。

 最近、「自閉症スペクトラム障害(ASD=Autism Spectrum Disorder)」という原因不明の病が増えてきました。以前は発達障害といわれていたものです。日々、ASDの大学生のカウンセリングを行っていますが、その中で自立できる人となかなか自立できない人がいて、そこには何か違いがあるような気がしてきました。

 具体的には、親に依存できなかった、あるいは親が怖くて親にも話ができない環境にあった人に比べて、親が十分に愛情を注いで、依存を受け入れて満たされた環境で育った子供さんは、親から離れて独り立ちできるのが早いような気がしています。

 世の中は超多忙な世界に変遷しており、女性も仕事を持つようになったため、子供を預けてでも仕事中心で生活している母親が増えています。しかし、幼い時に母親が子供に十分な愛情を注ぎ、自然に母親から離れていくといった、ごく自然な子供の成長を見守るためには、母親があまりにも仕事に熱中するのは好ましくないのではと感じてきました。

 経済的に大変な時代なので共働きが多くなっていますが、親が子供の自然な成長を見守る時間をもっと増やすことができればと個人的には感じています。来年度はこの問題も含めて、4カ国・地域(日本、台湾、中国、オーストラリア)の国際比較研究が始まります。(佐賀大学保健管理センター長・精神保健指定医 佐藤武)

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