♪お茶は嬉野 煙草(たばこ)は国分 歩む姿はユリの花…。100歳になる嬉野生まれの男性が、茶摘み唄と言って口ずさんだ。熊本県の国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園」。一昨年4月、佐賀県のふるさと交流事業で、入所者を訪ねた折のことだ◆かつて暮らした村で茶を摘みながら聞き覚えた唄だろうか。朗々と響く声を耳にし、“望郷”の念の強さを思わずにはいられなかった。胸の内には、故郷から引きはがされた悲しさ、悔しさも秘められているやもしれない。佐賀出身の入所者は12人◆その一人、自治会長の志村康さん(85)は「厚い差別と偏見で、私たちと同じ辛酸をなめることがないようにしないと」と語った。かつて「らい病」と呼ばれ、強制隔離政策がとられた時代がある。世間に誤った知識が広がり、その無理解が患者と家族までも苦しめた◆人権教育に取り組む浜玉中の生徒たちが参加していた。「病気せんごとね」。入所者からやさしい声が掛かる。触れ合いで、病気や差別の歴史を知る。子どもたちは、多くを学びとり成長していく。この事業は毎春催され、県がさらなる学校の参加を検討していることに、希望を持ちたい◆今も帰郷できない入所者もいる。あすの「世界ハンセン病の日」は、差別や偏見への戒めを胸に刻む日に。教訓をどう語り伝えていくかである。(章)

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