日本は人口減社会。人が減ると経済活動が縮小し、社会保障も地域社会も成り立たなくなるのに、国全体の危機感は、まだ乏しい。行き詰まる前に、今こそ外国人の受け入れ、ひいては移民まで含めて真剣に考える時期に来ている。

 外国人を、単なる労働力として短期で使うのではなく、日本の社会にさまざまな貢献をする可能性も持つ人材としてみる。ともに手を携え、「多文化共生社会」をつくっていくことが求められる。

 「これが、ぜんざいよ」「めっちゃ、おいしい」―。杵島郡白石町の商店街の交流施設。町で暮らす外国人向けの日本語教室が今月16日に開講、ベトナムの女性ら約20人が参加し、町の住民たちと交流した。正月文化を学んだほか、ぜんざいを一緒に食べ、和気あいあいの会話が弾んだ。

 町には約140人の外国人が住み、7割がベトナムの技能実習生。縫製工場や農業の現場などで働くが、職場での人間関係はあっても、地域の人たちと気軽に話せる場が少なかった。「日本の習慣や生活をいろいろ学べれば」と目を輝かせていた。

 今回の試みは「白石モデル」と呼ばれている。県内の日本語教室は13カ所あり、いずれも住民主導。白石はボランティアが立ち上げ、町と県が支援する体制だ。これから本格的に外国人が入って来た時に、「選ばれる地域になりたい」との思いが町にはある。

 佐賀県内で暮らす外国人は急増し、6千人を超える。日本の人口は2065年には、今より3割減って8808万人になるとの推計があり、人手不足が深刻になる。経済の活性化のためにも、外国人をもっと増やさざるを得ないだろう。自国民だけで人口を増やしている先進国はないからだ。

 外国人定住政策の専門家、毛受敏浩さんの『限界国家』(朝日新書)に詳しいが、政府は「移民制度」を持たないというタテマエの下で、実質的に外国人労働者を受け入れてきた。ただ、技能実習生の制度を見る限り、その場しのぎで対応してきた感がある。

 今後は明確なビジョンを持つ受け入れ制度の構築が不可欠だ。ロボットや人工知能(AI)だけでは、人手不足は補えない。

 一方、技能実習生の失踪も急増している。失踪者が日本社会のアンダーグラウンドに入り込めば、治安にもかえって悪影響だろう。だが、失踪するには、それなりの理由がある。手遅れになる前に、適正な定住政策を整備し、日本の言葉や文化を学んでもらうことが、この国で活躍できる土台になる。

 少子高齢化が進む韓国、中国も移民受け入れに舵(かじ)を切ろうとしている。移民の人材は世界中で奪い合いになる。今後は、日本に外国人が来る魅力をどうつくれるかがポイントだ。

 そこに今回の白石町のような取り組みが、大きな意義を持つ。田島健一町長も「外国人に良いイメージを持ってもらうのが大事。日本に行くなら白石がいいよ、と言ってもらいたい。それが将来、町の財産になる」と話す。

 その際、こちらが教えるだけでなく、外国人からも自国の文化など教えてもらうという「対話型」の交流が鍵を握る。互いが理解し合える寛容な社会こそが目指すゴールといえよう。(横尾章)

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