衆参両院で25日までの2日間、安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党代表質問が行われた。

 首相の施政方針を問いただすことで国政における当面の争点を明らかにすることが目的の代表質問では、一問一答形式の委員会審議のように突っ込んだ議論にならないのは致し方ないだろう。

 しかし、答弁に臨む安倍首相の姿勢は真摯さ、誠実さに欠けていた。野党に攻撃の材料を与えない「安全運転」を意識してか、過去の演説や発言の繰り返しがほとんどで、質問に正面から答えないこともあった。

 与党側も、安倍首相に主張表明を促す誘い水のような質問が多く、争点の明確化というよりもアピールの場を設ける側面が強すぎる。これでは野党から「与党質問はよいしょ」と揶揄されても仕方ないだろう。

 政策づくりには、そのデメリットを含め多面的で掘り下げた議論が不可欠だ。来週から始まる衆院予算委員会審議を充実させるためには野党の突っ込んだ質問、追及はもとより安倍首相がそれに正面から答えることが必要だ。

 そんな中で、一瞬、耳目を集めたのが25日の自民党の吉田博美参院幹事長による質問だった。

 冒頭、吉田氏は「私は首相に耳障りなことをあえて申しあげることも、役目の一つと考えている」「首相にしっかりと話をできる人間がきちんといる。それが自民党の強みだ」と強調。「政治には、バランスと緊張感も必要だ。緊張感を欠いた政治は、時としておごりや緩みにつながる危険がある」と述べた。

 さらに「与野党が互いに切磋琢磨して、緊張感のある議論が繰り広げられる国会運営を目指さなければならない」と国会審議の在り方にも言及した。

 与党が厳しい姿勢を見せるかと思わせたが、「野党の皆さまのご理解とご協力を望みます」と野党側に努力を求めて、安倍首相に直接的な注文や要請もなかった。

 また、憲法改正や経済政策など政策ごとの具体的な質問でも安倍首相の見解、考えを問うにとどめた。これでは「よいしょ」批判をかわすための「やらせ」と見られても仕方ないのではないか。

 質問をかわす例は少なくないが、そんな姿勢が如実に表れたのは野党各党が取り上げた保育所の待機児童解消を巡るやりとりだった。

 民進党の大塚耕平代表が「2020年までに32万人分の受け皿を整備する」という方針について、申し込みを断念した人を含む潜在需要を勘案すれば足りないのではないかと指摘したのに対して安倍首相は、32万人の推計方法を説明しただけだった。

 さらに「保育の実施主体である市区町村が潜在ニーズを踏まえながら、受け皿整備を行うことが重要だ」と責任の主体をすり替えるような答弁さえ行った。

 この問題は前日も立憲民主党の枝野幸男代表、希望の党の玉木雄一郎代表が取り上げ、特に玉木氏は、潜在需要を考慮すれば89万人の受け皿が必要との民間試算を引き合いに出して追及したが、やはり答えはなかった。

 同様の傾向は、この数年、「安倍1強」状況が固まるとともに強まってきたが、このままでは国会審議が形骸化、深刻な政治不信を招くことになることを安倍首相は肝に銘じるべきだ。(共同通信・柿崎明二)

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