Q.一人株主で中小企業を経営しています。子に長男と次男がおり、妻は既に他界しています。自分が亡くなった後は長男を後継者にと考えています。何をしておけばよいでしょうか。

 A.事業承継に際しては、さまざまな財産の承継が問題になりますが、株式に特化して考えると、次の通りになります。

 まず、何もしないまま株式が相続されると、相続分に応じて「準共有」となります。例えば発行済み株式総数が100株の場合、子らに50株ずつ分配されるのではなく、1株ずつが持ち分2分の1となります。議決権行使は過半数の持ち分が必要なので、会社の意思決定ができず(=デッドロック)、事業停滞の懸念があります。

 そこで、主な予防策として(1)種類株式の活用(2)遺言(3)信託を概説します。

 (1)の種類株式は、拒否権付き株式(=黄金株)、議決権制限株式、取得条項付き株式などです。長男への生前贈与は早くも会社の実権(の一部)を譲ってしまうようにも思えますが、種類株式の活用により対策可能です。ただ、定款や法人登記の変更などの手続きが必要で、デッドロックの要因となり得る黄金株については特に手当てを講じておく必要があります。

 (2)は、遺言書で遺産分割方法を指定します。新しい遺言書を作成すればそれが有効になるので、簡易に変更できるメリットがありますが、遺言書の検認、株主名簿の名義書き換えなどの手続きに一定期間を要します。

 (3)はバリエーションがいくつかありますが、例えば信託銀行などに次の内容で株式を譲渡する信託契約を締結します。「(1)経営者の指図に従い受託者が議決権を行使する(2)経営者の死亡により信託契約は終了し、受託者は長男に株式を交付する」。この場合、死亡後も契約の効力を存続させることができ、経営者の死亡後10年間は長男に議決権行使の指図権を与え、受託者が従うといった取り決めも可能です。ただ、誰とでも無限定に契約締結できるわけではなく、信託法に留意が必要です。

 事業承継は事情に応じて最適な方法が異なります。いずれの方法をとるにせよ、次男の遺留分に配慮する必要があります。(弁護士・力丸哲 佐賀市)

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