いったんは合意した民進党と希望の党の統一会派結成が、あえなく頓挫した。きょう召集される通常国会は「安倍1強、野党多弱」のまま迎えることになった。繰り返される野党の迷走に失望した有権者も多いのではないか。

 「急いては事をし損じる」。民進党の原口一博衆院議員(佐賀1区)と希望の党の大串博志衆院議員(佐賀2区)はくしくも同じことわざを用いて両党の統一会派構想を評した。基本政策の合意を明確にしないままの数合わせの野合では早晩頓挫することが2人には見えていたのだろう。

 統一会派結成の狙いは野党第1会派の地位にあった。国会では野党第1会派が与党と審議日程を決め、会派の所属議員数に応じて各委員会のポストや質問時間も割り振られる。存在感を示し、低迷する支持率の回復につなげようと焦るあまり、肝心の政策のすり合わせがおざなりになった。

 統一会派の合意で最大の焦点になったのが安保法制だ。憲法解釈の変更による集団的自衛権行使を違憲と主張してきた民進。かたや希望は安保法を事実上容認しつつ必要な見直しを図るという曖昧な立場をとってきた。結果、合意文書は「違憲と指摘される部分を削除することを含め、必要な見直しを行う」という玉虫色の書きぶりになった。大串氏は「違憲と指摘される部分が何を指すのか明確にしなければ、必ず問題になる」と指摘していたが、それはわずか2日後に現実のものになった。

 頓挫の背景には二つの要因があった。一つは衆院選時の「排除の論理」に対する民進の感情的なしこり。もう一つは希望の政策理念の曖昧さだ。特に安保法制と憲法観で保守色が強い結党メンバーや参議院の3人と、民進時代からの主張を貫く大串氏らとの隔たりは大きい。統一会派の頓挫後、玉木雄一郎代表は「安保と憲法に関して早急に党としての考え方をまとめる場を持つ」と語った。

 今回のドタバタ劇の中で、希望にこうした動きが見えたことは唯一、評価できる。保守色を強く打ち出し、政権寄りのスタンスをとるのならば大串氏らは党を出ていくだろうし、逆に振れれば結党メンバーらが離れ、代わりに立憲民主党を含む3党による共闘も視野に入ってこよう。

 安倍首相は通常国会を「働き方改革国会」とした。一部専門職を労働時間規制の対象外とする「高度プロフェッショナル制度」は最大の対決法案になる。秋の臨時国会での発議、来年4月の統一地方選前の国民投票が取りざたされる改憲論議も大きな焦点となる。

 国のかたちを左右する節目となる国会だが、自民は昨年同様、それまで「与党2、野党8」としてきた野党の質問時間の割合を減らす方向だ。60人程度の少数野党が乱立している状況が続けば与党を利するだけで、国会論戦は緊張感を欠いたものになる。

 昨年の衆院選で比例票を見れば自民の1854万票に対し、立憲民主と希望の合計は2073万票と上回った。巨大与党に対峙(たいじ)するため、野党ができるだけ力を結集すべきというのは、確かにその通りだろう。ただ、数合わせの大きくなりたいだけの野合ではますます有権者の心は離れていく。政策の一致を基本とした力強い野党の姿を見せてほしい。(栗林賢)

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