除草剤の低濃度散布の効果について、市丸喜久センター長(中央奥)から説明を受ける農業者ら=伊万里市

草刈り後34日、薬剤散布後19日目のあぜ。無処理の手前に比べ、奥は雑草の生育が抑えられている=伊万里市

 農家の高齢化が進み、中山間地などで農地の維持管理が課題になる中、西松浦農業改良普及センター(伊万里市)は、あぜやのり面の草刈り作業の負担を減らす研究を進めている。除草剤を低濃度で散布し、雑草の生育を抑える実証実験で、これまでに草刈りの回数やコストの削減効果が得られた。中山間地が大半を占める管内だけでなく、県内全域に広めるため、効果の精度向上に向けた検証を続けている。

 「片足に重心がかかり、危険も伴う。傾斜地の草刈りは大変」。西松浦郡有田町の農家松瀬政司さん(66)は、同じ姿勢で草刈りを続けてきたため膝を痛めた。「後継者も減っている。草管理はこれからどうなるのか」と不安を漏らす。

 急傾斜地が多い中山間地は作付面積に対してあぜの割合が高く、30%近くになる地域もある。センターの試算では、春から秋までの雑草量は10アール当たり約7トン。市内のモデル集落で営農上の課題を聞いたアンケートでは、「あぜの除草作業」が「(機械の)オペレーター問題」に次いで多く、女性では最も多かった。

 あぜやのり面の管理は直接収量に結び付かないが、雑草が生い茂ると病害虫の温床になるほか、イノシシなどがすみ着きやすい環境になる。ただ、除草剤で雑草を完全に枯らすと、地中の根や茎で維持されていたのり面が崩壊する恐れがある。雑草の生育を抑える市販の薬剤もあるが、10アール当たり2千円を超える費用がかかるという。

 このためセンターでは、除草剤の低濃度散布の実験を2016年度から本格的に着手。一般的な除草剤を水で5分の1から10分の1程度に薄めた場合、雑草を枯らすことなく生育を抑えられることが分かった。

 低濃度散布により、年間5回程度だった草刈りの回数を少なくとも3回に削減できる見通し。費用も10アール当たり100~200円程度に抑えられ、ほ場への薬害もほぼ確認されていないという。

 センターは研究結果をまとめた冊子を県内の関係機関に配布しており、今後は研修会などで農家に周知していく。市丸喜久センター長は「面積を正確に把握して散布しないと効果にばらつきがあるが、基礎があれば現場で応用できる。平たん部でも大規模農家に使ってもらえるのでは」と話す。

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