風邪は呼吸器にウイルスが入って感染することで起こります。一時的に鼻(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)、喉(咽頭痛)、せきなどの局所症状と、発熱、倦怠感、食欲不振などの全身症状が生じ、自然に治る病気です。

 医者は喉を診て、胸に聴診器を当て、風邪の診断をしているかのように見えますが、実際は「喉が少し赤いけど、へんとう炎はなさそうだ」とか、胸の音を聞いて「肺炎や気管支ぜんそくはなさそうだ」と考えているわけです。言い換えると、風邪のような症状だけど風邪ではない、見落としてはいけない病気を見つけようとしているわけです。

 普通の風邪には特効薬はありません。熱は抵抗力を上げるため、せきは異物を外に出すための反応です。これらの反応を薬で抑えたほうがよいかどうかは大変悩ましいところですが、症状を和らげることで食欲が出たり、十分な睡眠がとれたりもしますので、解熱剤やせき止めなどの処方をします。

 一方、普通の風邪より全身症状が強く、流行性の風邪がインフルエンザです。普通の風邪とは異なり、ウイルスの増殖を抑える治療薬があります。流行期に高い熱で病院を受診された場合は通常、綿棒のようなものを鼻の奥に入れ、粘膜をこすって検査し、陽性であれば薬を処方します。

 医者が一番悩むのは、インフルエンザの検査が陰性となった場合の対応です。家族にインフルエンザの人がおられれば、検査が陰性でも薬を出すこともありますが、取りあえず普通の風邪の治療を行いながら経過をみてもらうことが多いです。その後、別の症状が出てきた場合は、それに応じて血液やレントゲンの検査を行います。

 時間がたってから別の病気だと判明することがあります。初期になればなるほど診断は難しいものです。治らないから別の医者にかかりたくなる気持ちも分かりますが、何でも、何度でも相談できるかかりつけ医を持たれたらいかがでしょうか。変化が分かることで、むしろ診断がきちんとできる可能性が高いと考えられます。(佐賀大学医学部附属病院卒後臨床研修センター 専任副センター長 江村正)

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