出題「三角形の内角の和は百八十度である。これを証明せよ」―。作家の遠藤周作は学生時代、こう答えた。「まったくそうである。そのとおり。僕もそう思う」。先生から大目玉をくらった思い出を随筆『劣等生、母校に帰る』に書いている◆こちらも「そのとおり」とはいかなかったようだ。センター試験で出されたムーミンにまつわる問題。作品の舞台はどこかを導き出す内容だったが、正解とされた「フィンランド」に対して、大阪大大学院の研究室が「断定できない」と異議を申し立てた◆配点わずか3点とはいえ、受験生にとってはここを取りこぼすかどうかは死活問題。入試センターは「設問として支障なし」と反論したが、センター試験は2021年から新たな「共通テスト」へ移る。「思考力」を求める方向性がはっきり打ち出されており、今回のムーミンも、その先行例とみられる◆この騒動をめぐっては、ムーミン公式サイトやフィンランド大使館が「まだまだ知られてないんだな、と反省」「ムーミン谷は作品を愛する皆さんの心の中にある」とコメント。心憎い対応ぶりでファンを増やしたようだ◆劣等生の遠藤少年は「学校のほとんどの授業がまるで異国の言葉を聞いているような気がした」―。まったくそうである。僕もそう。深く共感する人も少なくないのでは。(史)

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