韓国と北朝鮮が平昌(ピョンチャン)冬季五輪で開会式の合同入場や五輪初となる合同チーム結成などで合意した。韓国は五輪を舞台に南北和解をアピールしようと懸命だ。「平和の祭典」という五輪の大義はあろうが、北朝鮮の核・ミサイル開発を棚上げしたような形で打ち出される融和姿勢は、前のめりすぎないか懸念される。

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は、北朝鮮が参加する平昌五輪を「南北関係改善と朝鮮半島の平和の転機としなければならない」と強調する。

 しかし、非核化を拒否し続けている北朝鮮と関係改善に突き進む姿を国際社会が冷ややかに見ていることを韓国は真剣に受け止めるべきだ。

 南北の合同チームなどで合意した次官級協議直前、カナダのバンクーバーで開催された北朝鮮の核・ミサイル問題に関する20カ国外相会合では、圧力維持と強化で一致した。韓国の康京和(カンギョンファ)外相も出席していたが、居心地の悪そうな表情が印象的だった。国際社会との温度差を実感したからだろう。

 北朝鮮と国際社会で韓国が板挟みになる状況は、当初から予想されていたものだ。韓国外交は、北朝鮮の核問題で、これまでもこうした難しい局面にたびたび立たされてきた。ある時は融和姿勢を維持しながら北朝鮮と米国を説得する仲介外交に取り組み、またある時は日米の圧力強化に足並みをそろえてきた。

 こうした経験と教訓をもとに、韓国外交は今、平昌五輪を舞台にした正念場に立たされているとの認識が必要だ。「平和の祭典」や「民族和解」といった大義は尊重されなくてはならない。危険なのは、誰も反対はできないこうした原則に幻惑され、北朝鮮の軍事的脅威という現実を遠ざけてしまう姿勢だ。

 今回の次官級協議では、北朝鮮の大規模代表団の訪韓だけでなく、北朝鮮東部にある馬息嶺(マシクリョン)スキー場での合同練習や、金剛山(クムガンサン)地域での合同文化行事の開催でも合意した。いずれも韓国側から提案したという。

 南北の往来を実現したいという文大統領の民族主義的な思考がうかがえる。しかし、北朝鮮の核・ミサイル開発の現状を考えれば、あまりにも情緒的だ。北朝鮮にすれば、想定した以上に韓国が歩み寄ってきたと映るだろう。

 そして、懸念されるのは韓国世論の分裂だ。最新の世論調査では、アイスホッケー女子が対象となっている合同チームについて、約7割が否定的だ。しかも、本来は文大統領の支持層である若い世代ほど批判的という。

 文大統領はアイスホッケーチームを激励に訪れた際、合同チームは「のちのち歴史の名場面となる」と理解を求めたという。しかし、露骨な政治介入に選手は割り切れない思いだろう。文大統領に統一問題で業績を残したいという思いがあるとすれば、なおさら冷静にならなくてはならない。

 統一旗を掲げる合同入場も、五輪の主催国が開会式で自国国旗を持ち出せないことに「釈然としない」との受け止めが少なくないという。当然だろう。南北共催の五輪ではないのだ。

 また、開催で合意している軍事会談の行方も焦点だ。北朝鮮は米韓合同軍事演習の延期ではなく中止を求めると予想される。日米と連携し、韓国は毅然(きぜん)と対応できるのか。祭典の後が問題だ。(共同通信・磐村和哉)

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