超高齢社会に突入する中、改正育児・介護休業法が来年1月から施行される。家族の介護・看護のために年間9万5千人が仕事を辞めている現実があり、国が掲げる介護離職ゼロに近づけていくのが目標だ。フルタイムで働き、残業もできる人だけを雇うという旧来の考えは全く通用しない。社会全体で多様な働き方を認める環境をつくり上げたい。

 日本の高齢化は世界中の国が経験したことのない速さで進んでいる。厚生労働省によると、この15年間で要介護認定者は2・8倍の608万人に増えた。一方、介護をしている雇用者のうち介護休業の利用者は3・2%にすぎない。今回の改正は仕事と介護の両立をより強く意識している。

 では具体的にどんな内容なのか。介護休業は現在、対象家族1人につき93日まで取得可能とされている。ただ、事前に申請した日数で原則1回しか取得できない。そのため改正法では介護の現状を考慮し、通算日数こそ93日で同じものの、3回を上限に分割取得できるようにしている。

 このほか年5日と定められている介護休暇の取得も柔軟化。現行の1日単位から半日単位の取得が可能になる。さらに介護休業とは別に、介護のための所定労働時間の短縮を利用できるようにし、介護終了まで残業免除を請求できる権利を新設。休業中の人が雇用保険から受け取れる給付金についても、従来の40%から67%に既に引き上げている。

 ただ、制度定着に向けては難しさもある。最も問題なのは、介護休業の制度自体がまだよく知られていないという現実だ。民間の調査によると、介護休業制度について「知らない」「内容が分からない」と答えた40代以上の男女は8割に上った。制度の周知徹底に努めることが必要であろう。

 一方、制度がうまく動き出しそうな雰囲気もある。佐賀労働局が11月に実施した改正法の説明会には、400人の定員を大きく上回る企業関係者が申し込み、関心の高さをうかがわせた。景気の回復基調が続く中、地方の企業ほど人材不足を痛感している。働きやすさを向上させなければ、いずれ淘汰(とうた)されてしまうという危機感もあるのだろう。

 今回は改正男女雇用機会均等法も同時施行となる。非正規雇用者の育児休業の取得要件を緩和しているほか、妊娠や出産を理由とする職場での嫌がらせ「マタニティーハラスメント(マタハラ)」に関しては、解雇などの不利益な取り扱いの禁止に加え、上司や同僚からの嫌がらせを防止する措置を新たに事業主に義務づけている。

 経済政策アベノミクスを推進し、景気回復を優先してきた安倍政権は「働き方改革」を前面に打ち出し、有識者らによる働き方改革実現会議が「病気の治療、子育て・介護と仕事の両立」「長時間労働の是正」など九つのテーマで論議を進めている。少子高齢化の荒波の中で、これまで同様の働き方では日本社会が維持できないとの意識の表れでもあろう。

 佐賀県内の企業は県や大学、経済団体などと連携し、若者の地元就職率を上げようとしているが、賃金などの待遇面に加え、働きやすさを追求することが地域社会を成熟させ、若者をとどめることにもつながるはずだ。(杉原孝幸)

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