国営諫早湾干拓事業の開門問題で、農水省九州農政局は16日、堤防内の調整池の淡水を諫早湾へ排水するポンプの増設案を佐賀県有明海漁協へ提示した。開門に代わる漁業振興の100億円の基金を活用して整備することを前提にしており、漁業者側からは「排水問題と基金案は別の話」などと反発の声が上がった。

 調整池からの排水を巡っては、漁協が有明海の養殖ノリに悪影響を及ぼす可能性があるとして国などに小まめな排水を要請し、山口祥義知事も排水のルール化や現在1基の排水ポンプの増設を求めている。ノリの色落ち被害が出た県西南部の漁業者は昨年12月、海上デモで改善を訴えていた。

 漁協の各運営委員長らが出席した農政局との協議は佐賀市で非公開で行われた。関係者によると、農政局側が漁業振興の基金を活用して1日10万トンを排水する既設と同規模のポンプを1基整備する内容を示した。建設費は10億~15億円で、維持費が年間1500万円と試算しているという。

 出席者からは「国の事業で有明海の自然を壊したのだから、ポンプ増設は基金案とは別にする責任がある」と提案を疑問視する意見が出たほか、ポンプ増設と基金案受け入れがセットになっていることを警戒する声も漏れた。今後、漁協としての考えを取りまとめる方針。徳永重昭組合長は会議後の取材で、「基金を利用した形でしかできないというのは難しいのではないか」と述べた。

 九州農政局の出席者は佐賀新聞の取材に対し、「(佐賀、福岡、熊本の)3県漁協で議論してもらっている話で、実現するかも分からないので公にはできない。基金案を受け入れてもらうことが前提なのは変わらない」と説明した。

 農水省は開門しない代わりに基金創設による解決を目指す一方、基金の経費として概算要求に盛り込んだ100億円の2018年度予算案への計上を見送っている。

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