阪神・淡路大震災からきょうで23年。兵庫県淡路島に立つ「神戸の壁」に先週、23の十字架がライトアップされた◆「神戸の壁」は、昭和の初めに神戸市の市場に建てられた防火壁で、戦時中の空襲や阪神大震災を耐え抜いてきた。現在は震災遺構として淡路島の公園に移設され、その傷だらけの姿は、私たちに震災の記憶を静かに訴えてくる◆武雄市出身で、震災当時の兵庫県知事だった貝原俊民さん(1933~2014年)が、震災から15年後にまとめた著書に、こう書き記している。「多くの人の命が失われ、街が廃墟(はいきょ)と化したのを目の前にして、私の心に深く刻まれた実感は、まさに“桜の花”が消えつつあり、そうであってはならないという感慨であった」◆桜の花を散らすものか―。そんな思いが、“光の彫刻”として定着した「神戸ルミナリエ」の実現に駆り立てたのかもしれない。巨額のコストがかかるイベントには反対も根強かった。が、ネオンも消え闇に沈んだ街にふたたび灯(とも)す光が「遺族、被災者の悲しさを癒す」と、貝原さんは押し切った◆「神戸の壁」ライトアップもまた、復興と鎮魂を願って市民団体が毎年続けてきた。一つ一つの十字架は、市民が両手を広げた影である。1年目、2年目、3年目…、23の十字架は、記憶の風化にあらがうという決意でもある。(史)

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