成人年齢を現行の20歳から18歳に引き下げるため、政府は通常国会で民法と関連法の改正を目指す。引き下げにより、民法制定から120年以上も社会に根付いた「20歳から大人」という線引きはなくなり、これまで「未成年者」だった18、19歳が親の同意を得なくてもローンを組んだり、商品を購入したりする契約を結べるようになる。

 改正は「年齢二十歳をもって、成年とする」と定める民法を含め25の法律に及ぶ。中でも、法相の諮問機関・法制審議会が2009年に成人年齢引き下げについて「適当」と答申して以来、消費者被害の拡大を防ぐための法整備が大きな焦点となり、14年から内閣府消費者委員会の専門調査会で検討が重ねられた。

 未成年者が親の同意なく契約を結んでも、後で取り消せるが、成人になると、それができなくなり、悪徳業者の標的になる恐れがあるからだ。このため、恋愛感情につけ込む「デート商法」などで合理的な判断をできない状態にして結んだ契約を取り消せる規定を消費者契約法に追加する。

 だが、なお多くの課題が指摘されており、「18歳成人」の環境が整ったとは言い難い。政府は民法改正案などの成立後に少なくとも3年の周知期間を置き、22年施行というスケジュールを立てているが、それにこだわらず議論を尽くし、見切り発車は避けるべきだ。

 民法では、女性が結婚できる年齢も現行の16歳以上から男性と同じ18歳以上に合わせる。飲酒・喫煙や公営ギャンブルの法律については、法律名や条文にある「未成年者」を外し、いずれも20歳未満の禁止を維持。また性同一性障害の人が家庭裁判所に性別の変更を申し立てることができる年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げるなど、見直しは多岐にわたる。

 法制審は09年の答申に際し、国民投票年齢と選挙権年齢に続いて成人年齢を引き下げることによって、少子高齢化が急速に進む中で若者に積極的な役割を担うことが期待されていると述べた。

 それを阻害する恐れが強いとみられるのが、消費者被害の拡大だ。法制審の部会でも「悪質業者が20歳の誕生日の翌日を狙って取引を持ち掛ける事例が多く、20歳になると被害相談件数が急増する」「若年者が多重債務者となる危険がある」などの意見が相次いだ。

 これを踏まえ専門調査会は、とりわけ若者らの被害が目立つデート商法や、就職への不安をあおって有料セミナーを受けさせる「就職セミナー商法」などによる契約の取り消しを可能にする規定を消費者契約法に追加するのが適当との報告書を昨年8月にまとめた。

 ただ議論の過程で若年成人の知識、経験不足などに乗じて結ばせた不必要な契約も取り消せるようにする規定の追加も提案されたが、業者側の強い反対などで、報告書では「今後の検討課題」にとどまった。消費者の需要や資力に見合った商品、サービスかどうかに業者が配慮するよう努める義務の導入なども先送りになっている。

 若者の保護を徹底するには救済範囲を拡大することが欠かせず、できる限り今回の改正で対応することが求められる。さらに消費者教育や自立支援、相談態勢の拡充も含め成人年齢引き下げに伴い必要となる対策の全体像を示し、国民に分かりやすく説明すべきだ。(共同通信・堤秀司)

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