白壁が美しい杉光陶器店(右)など塩田宿の町並み=嬉野市塩田町

漆喰の白壁 川港の記憶

 嬉野市塩田町にある国の重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)「塩田津」。長崎街道の宿場町であり、江戸時代には有明海の満ち潮を利用する川港としても栄えた。町並みを特徴付けるのは漆喰(しっくい)の白壁。洪水や火災に強く「居蔵家(いぐらや)」と呼ばれる町家だ。
 現在も残る居蔵家でひときわ大きいのが、隣り合う「杉光陶器店」と「西岡家住宅」。いずれも1855年の建築で、西岡家住宅は国の重要文化財(重文)に指定されている。杉光陶器店社長の杉光敬一郎さん(58)によると、「うちにも重文の話は来たが、規制が多く住むには不便なので受けなかった、と父から聞いた」という。
 杉光さんによると、この家屋が「杉光陶器店」となったのは昭和初期、祖父の代。建築当時は、西岡家と同じく裏の川港で荷を積み卸しする廻船(かいせん)問屋だった。大正末期、窯元を営んでいた杉光家が買い取った。

重厚な中にも、観光客が気軽に入りやすい雰囲気に作り替えられた杉光陶器店の室内

 増改築も施されてきたが、現在の外観は分かる範囲で建築当初の姿を復元している。一方で内装は展示場を広げ、喫茶カウンターや陳列棚も設けて、観光客も気軽に入りやすい雰囲気に造り替えた。蔵の一つはギャラリーとして貸し出しており、時にはコンサート会場にもなる。
 杉光さんの亡き父・和雄さんは建物や町並み保存に特に強い思い入れをもち、伝建地区指定にも尽力した。店についても、使われている木材が腐るから雨漏りをさせないようと、繰り返し言っていたという。杉光さんも、どっしりと堅固な梁(はり)や柱には「いまだに松ヤニが染み出てくるんだから、本当に立派な木材ですよね」とほれ込んでいる。
 中学3年の長女・敬香さん(15)は友人をよく招き、年末にはクリスマスパーティーも開いた。妻・貴美子さん(55)は「広くて集まりやすいのだろうけど、もしかしたら娘なりにこの家が誇らしいのかも」と目を細めた。  

ちょっと寄り道

志田焼の里博物館 全国最大級の石炭窯 

 杉光陶器店から北へ車で約10分の距離にある、「志田焼の里博物館」。2千坪以上の敷地に、1984年まで操業していた陶磁器工場をそのまま残している。ある日突然、時の流れが止まったように、さまざまな建物や機械、道具が整然と並ぶ。
 独特な情緒もさることながら特に目を引くのは、当時火鉢などを焼いていた全国最大級の石炭窯。現在は毎年春と秋のまつりで、コンサートや喫茶の会場になっている。
 午前9時から午後5時まで。水曜定休。入館料は300円(20人以上の団体で100円引き)、中学生以下は150円(同50円引き)。ろくろ(1200円から)や絵付け(600円から)、ランプシェード作りも体験できる。問い合わせは同館、電話0954(66)4640。

アクセス

 

 長崎自動車道武雄北方インターから、国道498号を鹿島方面に車で約15分。嬉野市社会文化会館リバティの手前で斜め右に入る長崎街道を約200メートル。建物裏の共用駐車場が使える。

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