今年は元号が明治となって150年となる。それもあって歴史を旗印にして、観光客を呼び込もうという動きが活発化している。その一方、「危機を突破した先達に学ぶ」として、地域再生のきっかけにしようという取り組みもある。各地の動きを追った。

 

 観光を前面に打ち出しているのが2015年から活動を始めた「平成の薩長土肥連合」だ。官軍の中心として活躍、明治維新後は多彩な人材を輩出した鹿児島、山口、高知、佐賀4県の知事が合同で地域の歴史を売り出している。

 京都市で開催された幕末サミット=2017年10月13日

 

 ◇スタンプラリー

 具体策として「薩長土肥スタンプラリー」がある。各県3カ所ずつ計12カ所の観光施設を巡れば、制覇賞が抽選でもらえる仕組みだ。山口県の担当者は「単独でPRするよりも、広域で連携する方が、ストーリー性もあって、認知度は上がっています」と分析する。

 同じネットワーク型には、大政奉還150周年を記念して昨年の1年間、福島県会津若松市や静岡市、山口県萩市など全国の22都市が参画して開催されたスタンプラリーもある。

 キャッチフレーズは「日本の『大転換』を体験しよう!」。100人を超える歴史好きな人らが22カ所のスタンプを集め完走したという。

 これら自治体が参加した「幕末サミット」は昨年10月、大政奉還の舞台となった京都市の二条城近くのホテルで開かれ「歴史に学び、地域でつながり、未来に活かす」とする二条城宣言を採択している。

 

 ◇振興に追い風

 鹿児島市にある「維新ふるさと館」近くには「明治維新150年」と書いたのぼりが目立つ=2017年12月

 鹿児島県内では昨年4月から「かごしま明治維新博」と銘打ったイベントが各地で始まっている。鹿児島市内の「維新ふるさと館」の近くには「明治維新150年」というのぼりも目立つ。

 今年の大河ドラマは西郷隆盛を主人公にした「西郷どん」。まさに追い風を受ける鹿児島県は、今年5月に記念式典を開く。「少しでも早く維新博を浸透させ、さらなる観光客の誘致につなげたい」と意気込む。

 同時に魅力的なまちづくりの機会とも捉えている。鶴丸城にあった御楼門の再建に着手、シンボルとして20年3月の完成を目指す。幕末史を研究する若手を支援する事業もある。「この時期の志、行動力を学んで今後の鹿児島にどう生かすのかが課題です」と、狙いが観光だけではないことをアピールした。

 「地域振興の機会にしたい」と話すのは栃木県だ。「日光市の中禅寺湖畔は外国大使館の避暑地としてにぎわいました。今春はJRグループによるデスティネーションキャンペーン先にも選ばれており、相乗効果を期待したい」

 日光田母沢御用邸記念公園にある皇后御学問所を公開するほか、日光が西洋流の動植物研究の一大拠点となったことを伝えるテーマ展を県立博物館で開く。

 

 ◇危機対応学ぶ

 京都市内にある「番組小学校」の流れをくむ学校跡。今は学校歴史博物館になっている=2017年11月

 京都は維新後、天皇が東京に移ったため都の地位を失い、わずか数年で人口の3分の1が減少した。この最大の危機を突破するため、番組と呼ばれた地区ごとに町衆が国の学校制度に先立って「番組小学校」を創設、日本初の芸術大学や公立の工業高校も創立された。事業用水力発電などのため琵琶湖疏水も整備されている。

 「これら数々の取り組みもあって、今日の発展の礎が築かれました。その奇跡と軌跡を学びたい」と京都市の担当者。今年1月7日には「明治150年・京都の奇跡プロジェクト」のキックオフイベントを開いている。

 「人口減少、高齢化が深刻な時代となった今こそ、当時の京都人がどう動いたかを知って未来につなげていく」とし、市民参加のイベントを続けていく方針だ。

 同じ危機感を持つのが兵庫県だ。掲げるのは「県政150周年」。幕府の直轄地を管轄する第1次兵庫県から廃藩置県、府県統合を経て1876年に摂津、播磨、但馬、丹波、淡路の5国からなる現在の姿となった。

 「五つの地域が持つ独自の文化や自然、産業など地域の魅力を磨きながら、2030年を見通した進むべき方向を示したい」とし、住民参加でまとめる長期ビジョンが最大の成果と位置付けている。【共同】

 

日本と地域の歴史焦点 各地で多様な活用期待

 政府は明治150年関連施策を実施する狙いとして「明治の精神に学び、日本の強みを再認識して現代に生かす」ことを挙げる。国は世界文化遺産の「明治日本の産業革命遺産」の理解増進や明治期の歴史を探訪する旅などを進めるという。

 これに対し地方側の受け止めは複雑だ。薩長土肥といった江戸幕府を倒した側は、観光を中心に素直に記念できるかもしれない。だが、戊辰戦争の記憶が残る福島県会津若松市は「戊辰150周年記念」と銘打った事業を展開する。

 兵庫県の「県政150年」や「北海道150年」のように、地域の歴史に焦点を当てようとする例もある。政府の思惑とは違う角度から、明治という歴史を見つめ地域の活性化や発展につなげようとする。国を挙げての富国強兵とは異なる、多様性が次の時代には必要ではないか。【共同】

 

「肥前さが維新博」3月開幕 

「葉隠」体感や藩校「弘道館」再現

 10カ月多彩なイベント

肥前さが幕末維新博覧会の幕末維新記念館の外観イメージ(佐賀県提供)

 明治維新150年に合わせ、日本の近代化に貢献した佐賀藩の歴史のある佐賀県では「肥前さが幕末維新博覧会」が3月17日、開幕する。10カ月間のロングランイベントで、幕末維新期に活躍した県内出身者やその業績を情報発信する。佐賀市城内を主会場に、県内各地でさまざまな催しが展開される。

 博覧会は三つのテーマ館を開設。メインの「幕末維新記念館」(市村記念体育館)は最新の映像技術を駆使して佐賀の魅力をダイナミックに紹介する。「葉隠みらい館」(旧三省銀行)は武士道の心得を書いた「葉隠」の世界が体感できる。「リアル弘道館」(旧古賀家、4月16日開館)は、総理大臣を2度務めた大隈重信や初代司法卿の江藤新平らを輩出した藩校弘道館を再現する。

 佐賀の焼き物と食がコラボしたレストラン「ユージアムサガ」(さがレトロ館)や佐賀藩とゆかりの深いオランダにちなんだ「オランダハウス」(旧佐賀銀行呉服町支店)などもある。サテライト会場を唐津市の旧唐津銀行と鳥栖市の中冨記念くすり博物館に設けるほか、博覧会の期間中に各自治体でさまざまな関連のイベントが開かれる。

 博覧会は来年1月14日まで。三つのテーマ館の入場券はそれぞれ前売り300~600円で、全館入場できる「チケット3」は前売り1000円(当日1200円)。期間中何度でも利用できるフリーパス券は3000円。高校生以下は無料。前売り券は全国のコンビニなどで販売している。

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