安定ヨウ素剤事前配布説明会で医師から取り扱い方法を聞く参加者=1月13日、伊万里市役所

 年末12月28日の佐賀新聞第2面は「芸術祭賞大賞に松本幸四郎さん」という1段記事以外、すべて原発関係の記事だった。

 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働について新潟県知事は慎重姿勢を示し、高レベル放射性廃棄物の最終処分場を巡る住民意見交換会ではバイト動員が常態化していた。九州電力玄海原発関連で素材メーカーの検査データ改ざん問題への対応に関する続報もあった。

 柏崎刈羽原発は福島第1原発と同じ沸騰水型で、事故原因など東電への不信感は根強い。バイト動員問題は企画会社が学生に持ちかけたとはいえ、いまだ残る業界の体質を浮き彫りにした。

 そうした状況の中で年を越し、玄海原発3、4号機は再稼働に向けていよいよ最終局面に入る。

 九電は3号機を3月、4号機は5月の再稼働を目指す。定期検査のため2011年12月、4号機が停止して以来、実に6年数カ月ぶりに電力供給を再開する。

 ただこれは原子力規制委員会の検査手順や工程上の流れであり、避難計画をはじめハード、ソフト両面で積み残された課題は多い。

 昨年暮れ、佐賀県は「原子力防災のてびき」の改訂版を県内全世帯に配布した。事故時「屋内退避が安全の第一歩」という内容を盛り込んだが、果たしてどれだけの人が開き、理解しただろうか。玄海原発に隣接する唐津市は12月議会で避難先や避難ルートを記したマップを作製すると明らかにした。しかし国の予算措置との関係で配布は来年になる。

 3、4号機が再稼働したとして、使用済み核燃料の貯蔵プールは5年で満杯になる。1号機は30年に及ぶ廃炉作業に入り、運転開始から37年になる2号機をどうするか。1号機から4号機までそれぞれ課題を抱え、その先には原子力政策の根幹に関わる核燃サイクルと最終処分場問題が横たわる。

 九電は当初、昨夏の再稼働を目指していたが、規制委員会の審査やデータ改ざん問題でずれ込み、8回目の「3・11」前後に、その時を迎えることになった。

 原発を巡っては年末、広島高裁が四国電力伊方原発の運転差し止めを命じた。その際、阿蘇カルデラ噴火の危険性を論拠としたことに疑問が呈された。ただもう一度思い起こしたい。福島の被災者が「原発さえなかったら」「津波被害だけだったら」と怨嗟(おんさ)を口にするように、復興を阻む原発の災禍を忘れてはならない。

 原発問題は技術論や文明論も絡んで、なかなか議論がかみ合わない。だが国のエネルギー基本計画が原発を「ベースロード電源」と位置づける以上、賛否にかかわらず向き合わなければならない。

 やがて迎える再稼働、そして反省と鎮魂の時を、原発再考の機会としたい。(吉木正彦)

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