関アジ、関サバを一本釣りする永倉和久さん。指先に魚の引きを感じる=昨年12月6日、大分市佐賀関

 「この辺りか」。大分市佐賀関の漁師、永倉和久さん(30)は船上から釣り糸を放り、疑似餌の付いた釣り針15~20本を水深約100メートルの海中に沈めた。

 昔ながらの一本釣りで狙うのは、全国に誇るブランド魚「関アジ」「関サバ」だ。釣り糸をたぐり寄せ、魚の体を傷めないように丁寧に釣り上げた。

 「無理に引っ張ったら傷つく。指先で魚の引きを感じながら上げていく。まさに、原始的な魚釣りですわ」

 神戸市出身。関西の釣り具メーカーに勤めていた。釣り好きが高じて2014年、縁もゆかりもない漁師町に居を移した。

 漁の舞台は、対岸の愛媛県伊方町まで約15キロの豊予海峡。「速吸(はやすい)の瀬戸」と呼ばれ、流れは激しい。そこで育った魚は身がぐっと締まり、脂が乗る。

 日の出前に佐賀関漁港を出る。大きな網を使う巻き網漁法と異なり、一本釣りはピンポイントで狙う。海の下層を泳ぐアジ、中層を回遊するサバ。海底の起伏や水温の変化を見極めて漁場を探す。

 探知機で魚群を見つけても、さっぱり掛からないこともある。「潮の流れが速い時間帯は海底に潜んで出てこない」。ベテラン漁師から「海を知れ」と教わった。

 「優れた漁師は経験と知識に裏打ちされた直感で勝負している。先輩たちの“財産”を吸収したい」

 大分県漁協佐賀関支店の組合員約500人の平均年齢は68・8歳。若者は伝統漁法と町の未来を背負う。

 メモ 大分県漁協佐賀関支店によると、2008年に約680人いた組合員は高齢化で減少している。14年度の水揚げ量は関アジ161トン、関サバ75トン。いずれも1キロ5000円ほどで取引される。

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