「困っている母親、子どもたちの目線に立った施策を」と話す石橋裕子さん=みやき町三根庁舎内の「ティアラ」

■周囲にシグナル気付いて

NPO県放課後児童クラブ連絡会理事長 石橋裕子さん(56)

 ◆子どもの貧困問題を取り上げたNHKの番組で、経済的理由で進学を諦め、困窮ぶりを訴えた高校生女子に対し、「本当に貧困なのか」とインターネット上で批判する騒ぎが起きた。部屋にあったアニメグッズを引き合いに「趣味を我慢したら進学できたのでは」と疑問を呈し、中傷する書き込みもあった。

 衣食住はしのげるけれど進学がかなわなかったり、周りと同じような普通の生活が送れなかったりする家庭は少なくない。これらは「相対的貧困」といわれ、飢えで生死をさまようような「絶対的貧困」とは異なる。

 相対的貧困は一見して分かるものではない。世間体を気にして何事もないように繕うケースもあり、見ようとしないと見えない。

 生存権で保障される「最低限度の生活」の中身は、「生存」だけでなく「人格的に豊かな暮らしを保障する」という考え方に変わってきている。こうした理解もないまま、訴えを短絡的に否定する声が上がるのは憂慮すべき状況だ。

 ◆2014年の厚生労働省のまとめでは、子どもの6人に1人が、平均的な所得の半分以下の貧困状態にある世帯で暮らしている。ひとり親世帯が半数以上を占め、その約8割は母子家庭だ。14年度の佐賀県母子世帯等実態調査によると、県内のひとり親世帯は5997世帯で、県の総人口に占める割合は全国でも10番目に高いという。平均就労収入は、母子家庭の6割が200万円未満だった。

 くだんの番組で取り上げられた女の子も母子家庭だった。離婚や死別でひとり親になれば、いきなり経済的な苦境に立たされる。暮らしを成り立たせるには住まいや仕事に加え、子どもの預け先が欠かせない。子どもが病気の時、頼れる実家があるかどうか。なければ仕事を休まざるを得ない。そうなると、非正規雇用の仕事しか見つからない。だから貧困から抜け出せないという悪循環がある。

 ◆困窮する家庭は世間とのつながりが乏しいケースが多い。生活に困り、DV(配偶者からの暴力)など別の問題も絡んでくると、誰かに相談する精神的な余力もなくなってくる。

 携わっている子育て支援の現場で、シングルマザーが暮らしの内情を明かしてくれるのは、スタッフと顔見知りになってしばらくしてから。時間はかかるけれど、関係が築けると、福祉への橋渡しはできる。

 子どもの様子を日頃から見ていれば、家庭環境の変化や異変が分かる。お風呂に入っていないとか、汚れていても同じ服を繰り返し着ているとか、周囲に発しているシグナルはある。

 困窮してしまう前に、どう福祉につないでいくかが課題だ。学校の先生や学童保育の支援員、近所の人たち…。問題に気づいた誰もがセーフティーネット(安全網)になれる。周りの人たちが「一人で頑張らなくていいよ」と伝えてほしい。気持ちを受け止め、意見を尊重しながら支援することが、貧困対策に結びついていく。

いしばし・ゆうこ 1960年生まれ。みやき町役場三根庁舎や東脊振健康福祉センターきらら館(吉野ケ里町)の子育て支援スペースの運営にも携わる。三養基郡みやき町。

2016 人権週間企画

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