「お父さんもすごいけど、この人も傑物」。佐賀県立図書館近世資料編さん室の伊香賀隆さん(45)は、感心することしきりだ。江戸後期、佐賀藩10代藩主鍋島直正の教育係、相談役を務めた儒者、古賀穀堂である◆「寛政の三博士」の一人、古賀精里の長男。遺稿が東京国立博物館に収蔵されており、伊香賀さんら10人ほどの手で解読が進められている。難解な漢文なので埋もれたままだった。句読点を入れ、重要なものは書き下し文にする。ゆくゆくは『佐賀県近世史料』として本にまとめられる予定◆原文を読み解くうち、穀堂が若き日から気宇壮大な志を持ち、ひいては直正を通し政治の正しいあり方を実践していったさまが見えるそうだ。例えば幕末の佐賀藩が、蝦夷地など北方に強い関心を寄せていたことにも、「起点は穀堂にあった」と伊香賀さんはみる◆江戸遊学中の東北見聞を記した資料があり、経験に基づいた直正への進言が、説得力を増したことがうかがえる。幕末期の基礎資料の解読は鹿児島、山口県と比べ、遅れをとっている佐賀。読みやすくすることで小説の下地となり、いつか大河ドラマにもつながろうというものだ◆直正が考えたことの多くの源が、穀堂にあるとすれば、今回の読み解きが果たす役割は大きい。お宝からどんな新史実が飛び出すか、楽しみだ。(章)

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