参加者らに、童謡「かえるの合唱」を歌うよう指示する下尾苑佳さん=唐津市の旧唐津銀行

じっくり話をして、その人が持つ魅力の引き出しを広げるという下尾苑佳さん=唐津市の旧唐津銀行

自分の好きなところを聞き出す下尾苑佳さん(手前)=唐津市の旧唐津銀行

食感や形などお菓子の魅力を話し合う「キノコ派」のメンバー=唐津市の旧唐津銀行

 幕末の藩校・弘道館を再現した「弘道館2」の3時間目の講義は昨年12月16日、唐津市の旧唐津銀行で開かれた。タレント事務所ホリプロでマネジャーや面接、スカウトなどを担当してきた下尾苑佳さん=唐津市出身=を講師に迎え、「ありのまま学」をテーマに中高生ら16人が自分の魅力を見つめ直した。その模様を紹介する。

 

【フリートーク】短所と長所、表裏一体

 中学から大学まで陸上部で、「何事にも全力だった。走ることが好きで、ただただ走っていた」という下尾さん。

 生まれてから高校生まで唐津で過ごした中で一番印象深いエピソードは、小学5年生の時に行ったバス旅行の席の決め方。「くじ引きで決めよう」とクラスの多くが賛成し決まりつつあったところ、下尾さんは「大人なんだから好きな人同士でいいと思う」と主張し、クラスの意見を変えた。その時、「みんなが本当に思っていることはどっちなんだろう」と思ったという。

 同じことは中学の修学旅行でも。「好きな人同士で組んだほうがいい。小学5年生でもできた」と主張し、またもやクラスの結論はそれでまとまった。

◆真っすぐ貫く

 正しいと思ったことを真っすぐ貫く少女だった。中学生時代の夢は、学校の国語の先生。いろいろな人の気持ちに寄り添いハッピーになることは何かという思いがあり、教師になれば実現できると考えた。

 その夢を持ちつつ、高校生卒業時は「唐津を飛び出してやる」と慶応大学に進学。下尾さんは「(高校生の頃は)唐津が世界の中心だと思っていたけど一度外に出て唐津を見てみたいと思った」という。

 学生時代に陸上でけがをした時、相撲部やグラウンドホッケーなど約40団体ある体育会の部活の1日体験をして回った。その中で、「すてきな人たちが世の中に伝わってない」と感じた。「それぞれ魅力があってすてきな人たちがもっと輝けることを仕掛けることできないかな。(ないならば)五輪を超えるスポーツの祭典を(自分が)つくったらいいんじゃないか」と思い立った。

◆心動かす仕事

 広告代理店に務める大学の先輩に五輪の話を聞きに行くと、「僕らはお金を動かす仕事をしてるけど、君はきっと人の心を動かす仕事が向いてるから人の心を動かす仕事をしなさい」とアドバイスをもらったという。そこで初めてマネジメントを知り、就活してホリプロに入社した。

 参加者の中にコンプレックスが「声」と答えた人が数人いた。「自分も声が嫌い」と下尾さん。高校生時代、友人から「苑佳の声、好きだよ」と言われたことや、国語の授業で音読を褒められたことから、変えられないことを嘆くのではなく、認めることの大事さや自分が考える短所と長所は実は表裏一体だと気づいたという。

 そのほか、外見を短所に挙げた人に対して、小さい頃に「ブス」と家族から言われていたことを打ち明けた。そこから立ち上がった理由を、「当時感情を出さない子だったが、よく笑う子になってブスと言われにくくなった。内面から人は外見につながるし、そのままでいいんだと思えるようになると強くなるのかもしれない」と話した。

◆若者にエール

 最後に佐賀弁を交えて、参加者に向けてエールを送った。「苦しいことが胸の中にいっぱいあるかもしれんけど、絶対に支えてくれる人が周りにいるから。自分を大事に、自分の気持ちにうそをつくことなく生きてもらえたら。いいところいっぱい見つけて、伸ばしていって」と呼び掛け、「ありのままで、よかとよ」の言葉で締めた。

【ワークショップ】10の質問 自分を知る

 「自分を動物に例えると」「自分を50音で例えると」「靴下は右と左どちらからはくか」など10の質問に、「3、2、1、はい!」の合図で全員一斉に大きな声で答えていく。参加者は「自分ではコアラと思ってなかったけどコアラって言ってた」「50音で例えると思わず『あ』って言っちゃった」と短時間の中で答えを絞り出した。

 下尾さんは「中高生は友達の意見に左右されがち。自分自身がしっかり答えを持っていくというところで自分を知る作業をしてもらいたかった」と意図を説明。「正義感が強い」「よく笑うところ」「素直」など自分の好きなところを挙げた参加者たちに、「なぜ言ったのか、時間をかけて突き詰めると『自分を知る』作業につながる。くだらないことでも、何でこの答えを言ったんだろうと何度も何度も突き詰め、自分のすてきなところはどこなんだろうと考えてもらって、そのまま進んでいってもらいたい」とアドバイスした。

【討論】自分のこだわり何か

 タケノコとキノコをモチーフにしたお菓子のどちらがおいしいか-。2チームに分かれて2回討論し、タケノコ派10人とキノコ派6人が意見を戦わせた。

 タケノコ派は「チョコとクッキーが一緒に楽しめる」「満足感がある」などの特徴を示した。一方、キノコ派は「カリカリした食感が好き」「手が汚れない」。1回目の討論を終え、相手チームのいいところを考えた後、再び自分のチームの魅力を討論し合った。

 この討論の真の目的は「自分のこだわりが何なのかを考えてもらうこと」。多面的な視点で考えることが大事で、「逆側の意見に1回立って、戻ってきて自分の意見を見直すとより深い意見にたどり着く」と説いた。

【感想】

 早稲田佐賀高3年の川合海音さん(18)「受講前は自分に自信が持てなかったけど、話を聞いて、何か変わる必要はないんだと思えたし、前向きに捉えられるようになった」

 唐津東高1年の宮川ことさん(16)「2時間は長いと思ったけどあっという間で楽しかった。人見知りだったけど初対面の人とも話ができた。(下尾さんは)同じ唐津市出身で誇らしいし、私も下尾さんみたいに活躍したいと思った」

=弘道館2とは=

 「弘道館2」は、若者の人材育成を図ろうと県内の若者たちを対象に、さまざまな分野の最先端で活躍する県内ゆかりの講師を招いて学ぶ講座。2018年開催の肥前さが幕末維新博覧会のプレイベントとして県が開いた。コーディネーターは電通の倉成英俊さん。次回の「4時間目」は2月17日、ゲーム開発、運営を手がける「Cygames(サイゲームス)」社長の渡邊耕一氏(伊万里市出身)を講師に授業を開く。ネット中継やアーカイブ配信も行う。問い合わせは事務局、電話0952(40)8820。

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