正月早々、物騒な脅し文句を聞かされ、驚いた人が多かったのではないか。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が「核のボタンが私の事務室の机上に常に置かれている」と述べ、トランプ米大統領は「私の核のボタンの方がずっと大きく強力で、しかも作動する!」とツイッターでやり返した。

 この応酬は駆け引きの一環であり、南北関係改善の動きも始まった。だが、人類を破滅させることが可能な核兵器で露骨に威嚇する言葉に、われわれが慣れてしまうとすれば恐ろしいことだ。

 昨年は「米国第一主義」を掲げるトランプ政権の登場で、世界が分断と排除の論理に覆われた。トランプ氏は、指導的な理念を歴代政権が掲げてきた米国の地位を自ら放棄し、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」や環太平洋連携協定(TPP)などを離脱。中国、ロシアなどと、あからさまに力を競い合う時代になった。

 一方、核兵器禁止条約が採択され、広島、長崎の被爆者らと連携して条約採択に尽力した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN=アイキャン)がノーベル平和賞を受けた。

 核兵器の廃絶、地球環境保護、自由で開かれた貿易体制の確立など、共通の目標へ向けて結束しなければ、人類の将来は危うい。今年は、国際社会が分断と威嚇による混迷から脱却し、理想と秩序の回復へ踏み出す年になることを望みたい。

 米国では今年11月に中間選挙が行われ、トランプ政権の2年に審判が下る。トランプ氏は中東政策を転換してエルサレムをイスラエルの首都と認め、情勢は混迷を深めているが、狙いは米国内の保守派の支持固めだった。中間選挙へ向け、低支持率にあえぐトランプ氏がさらに内向きの政策を打ち出すことが懸念され、今年も目が離せない。

 トランプ氏が自国優先の政策を打ち出すたびに、国際社会で中国、ロシアの影響力が拡大する側面があり、この点も注視する必要がある。

 2期目に入った中国の習近平指導部は「中華民族の偉大な復興」を掲げ、現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」をてこに、新秩序の確立を目指している。

 ロシアでは3月に大統領選が行われる。ウクライナ紛争でクリミアを編入して以降、欧米の制裁で経済は停滞したが、愛国主義に支えられて高い支持率を保つプーチン大統領の通算4選は確実だろう。

 欧州では、来年3月の英国の欧州連合(EU)離脱を見据えた詰めの交渉が後半戦に入る。またドイツで昨年9月の総選挙後、連立政権ができておらず、メルケル首相が政治空白を解消できるかどうかが焦点だ。少数与党の不安定な政権運営を強いられる事態や、解散総選挙になれば、世界に影響が及ぶ懸念材料となる。

 中東では過激派組織「イスラム国」(IS)が壊滅状態に追い込まれたが、ISに共鳴するテロは依然として続いている。イスラム教シーア派の地域大国イランと、スンニ派の盟主サウジアラビアの覇権争いが激化していることも心配だ。グテレス国連事務総長は新年あいさつで国際社会の結束を訴え、世界の指導者に「亀裂を埋め、境界に橋を架けると決意してほしい」と呼び掛けた。各国がこの訴えに応えるよう求めたい。(共同通信・上村淳)

このエントリーをはてなブックマークに追加