「二十歳になったら、連れていきたいところがあるんだ」―。親友の一家に誘われて信州・穂高連峰に登った“成人式”の思い出を、女優の杏さんがエッセー『杏のふむふむ』(ちくま文庫)に書いている◆標高3190メートル。4日間かけて山々の稜線をたどる、国内最難関レベルのコース。またがれるほど左右が切り立った馬の背が続き、一歩間違えば、たちまち崖下へ転がり落ちる。「ここまで己と対話をしたことは無かったように感じる。ひるむ自分を励まし、慰め、注意し、時には怒り、戦った」◆きょうは成人の日。新成人が生まれたのは1997年4月から98年春まで。当時はペルーの日本大使公邸人質事件や、「山一証券」の破たんがあり、地球温暖化対策の京都議定書が採択された◆それから20年。東日本大震災の復興も道半ばというのに、各地を災害が襲う。非正規雇用など格差が広がり、貧困も深刻化してきた。横たわる社会不安にどう立ち向かうか。ネットを駆使する「デジタル・ネイティブ世代」なら、新たな知恵が生まれるかもしれない◆穂高での成人式で、杏さんは地面を踏みしめて進む大切さを実感し、「仲間に囲まれ、支えあい、乗り越え」「少し大人になった」―。新成人にもいくつもの山や谷が待ち構えていようが、ひるまずに一歩ずつ前へ。成人おめでとう(史)

このエントリーをはてなブックマークに追加