〈本当はショッキングピンクとかトマト色とか、ものすごく派手な色が着たいんです。あまりに色に飢えているから…〉。イランの首都テヘランの若い女性の言葉である。今は米国に住むイラン出身の女性英文学者、アーザル・ナフィーシーが書いた『テヘランでロリータを読む』の一節だ◆イランの大学で教えていた彼女は1995年、抑圧的な大学当局に嫌気がさして退職。女子学生7人と、西洋文学の研究会をひそかに始める。米国で「抵抗の物語」としてベストセラーになった本書は、その回顧録である◆79年の革命後、当局の監視の目が光る全体主義社会となったイラン。とりわけ女性たちは自由を奪われ、今も苦しむ。この本には、着用を義務づけられたベールとスカーフを脱ぎ捨て、ひとときの解放感を慈しむ女性たちの生き生きとした姿がある◆イランで昨年末、反政府デモが始まった。デモの着火点は物価高だが、タブー視されていた最高指導者ハメネイ師への批判にエスカレート。地中にたまっていたマグマのように、自由を求める民衆の不満が噴き出した。イラン指導部は鎮圧に躍起だ◆ここにきて、イランを敵視するトランプ米大統領が「デモ支持」と発言し、問題を複雑にしている。監視という水槽の中に無理やり沈められた国民は、呼吸をするのに必死なのである。(章)

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