「碁聖」と称えられた平安時代の囲碁の名手・寛蓮に、奇怪な一局が伝わっている。「今昔物語集」にある◆とある屋敷に招かれ、貴人らしき女性から「どれほどの腕前か見せてもらいたい」と、すだれ越しに棒で示されたのが、碁盤の中央「天元」。初手の天元は分が悪いというのが常識だが、有利なはずの寛蓮の石はたちまち全滅させられる。「これは奇っ怪。人ではなく化け物か」とおののく◆この寛蓮の「碁聖」は現代にも引き継がれ、七大タイトルのひとつに。現在の碁聖は井山裕太九段で、七大タイトルを2度も独占する快挙をやってのけた。将棋の羽生善治氏の永世七冠と並んで、国民栄誉賞が検討されている◆井山碁聖もまた、「人ではない」ものと対局した。相手は人工知能(AI)である。昨年3月に対局して惨敗だったが、ここから一気に強さを増した。「最近の囲碁はAIに影響を受けて変わってきた部分が大きい」と前向きに受け止め、まさに「人ではない」力を、自らに取り込んだ。まだ28歳、どこまで強くなっていくのか◆碁聖・寛蓮は現代に通じる囲碁のルールを確立させ、今昔物語集のほか、「源氏物語」などに名を残す。かつては長崎県側と出生地論争もあったが、鹿島市生まれで決着し、昨年は囲碁の殿堂入りした。きょうは語呂合わせで「囲碁の日」。(史)

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