全国には、その土地固有の歴史や自然がある。奥深さに触れ、内外に発信しようと案内役を買って出る人たちがいる。佐賀新聞社とデーリー東北新聞社(青森県八戸市)、山陰中央新報社(島根県松江市)の友好3紙による新春恒例の合同企画は今年、3県で奔走するボランティアガイドの姿を通して、それぞれの郷土の魅力を紹介する。

 

東よか干潟ガイド 佐賀市

佐賀新聞社

有明海に生息する生き物や渡り鳥について説明するボランティアガイドの田崎さん(左)=佐賀市東与賀町の東よか干潟

 干潟に残った海水に朝日が反射し、輝いていた。12月上旬、佐賀市東与賀町にある「東よか干潟」の展望所で、案内役の田崎義昭さん(53)が観光客2人にささやいた。「クロツラヘラサギがいますよ。このまま双眼鏡をのぞいてください」。無数の鳥の群れの中に名前の通り、くちばしが黒く、へらの形をした白鳥が20羽ほどたたずんでいる。世界に約3千羽しかいないといわれる希少種だ。

 

 東よか干潟(218ヘクタール)と肥前鹿島干潟(鹿島市、57ヘクタール)は2015年、国際的に重要な湿地としてラムサール条約に登録された。ムツゴロウなど独自の生態系を育み、渡り鳥の中継地点にもなっている。日本一とされる有明海の干満差がつくる「命のゆりかご」。その魅力を伝えようと、「東よか干潟ボランティアガイド」は16年5月から活動している。

 20代から70代の24人が登録し、無償で案内している。登録前に数カ月間の研修を受け、登録後もどう伝えれば訪れる人たちに興味を持ってもらえるか、それぞれが工夫を重ねている。

 会社員の田崎さんは、子育てが一段落し、地域のために役立ちたい思いで、休日にガイドを務めている。時間を見つけては干潟の日常を写真や動画で切り取り、タブレット端末も使って観光客に紹介する。

 冬は鳥の楽園になる。ズグロカモメやシギ、チドリ…。シベリアからオーストラリア方面へ1万2千キロの長旅をする鳥もいて、格好の休息地だ。

 陸上にもユニークな生物がいる。ムツゴロウに加え、片方のはさみが大きいカニのシオマネキ、塩生植物のシチメンソウなど季節よって多彩な表情を見せる。

 有明海では高級二枚貝のタイラギが6季連続の休漁になるなど異変が指摘されている。田崎さんは干潟の生き物たちに目を凝らすたびに、脈々と続いてきた営みを未来にも残したいという思いを強くしているという。「県内外の多くの人に有明海の豊かさを知ってもらうことが、宝の海を守ることにもつながる」。そう信じている。

ツクシガモなどの渡り鳥を始め、多くの鳥たちが行き交う有明海の干潟=佐賀市東与賀町の東よか干潟

 ■有明海

 約1700平方キロの浅い内海で、干潮時は海岸線から5~7キロの沖合が干潟となって露出する。大きな干満差が海水と太陽の光を交互にたっぷり吸収し、豊かな栄養分を育むことから、ノリ養殖も盛ん。昨季、佐賀県産ノリの販売額は約249億円で、販売枚数ともに14季連続で日本一になった。一方、諫早湾(長崎県)の干拓事業を巡っては漁業や環境に及ぼす影響が指摘されている。

 

<山陰中央新報社> 世界遺産の輝き 次代に
<デーリー東北>  中世の城郭 漂うロマン

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