タイラギの稚貝。5センチ程度の大きさで放流する(西海区水産研究所提供)

■有明海でデータ蓄積

 有明海で不漁が続く高級二枚貝のタイラギを復活させようと、佐賀県は新年度から人工種苗生産や稚貝の放流による新たな水産資源回復技術の開発に取り組む。有明海から姿を消した同じ二枚貝のアゲマキを20年かけて人工貝の再生産や漁場造成に結び付けてきた成果をタイラギでも生かす。佐賀を含む沿岸の九州4県が協調して進め、「宝の海」の再生を目指す。

 

 有明海の冬の風物詩だったタイラギ漁は1990年代後半以降は漁獲量が激減し、今季まで6年連続で休漁になり、年ごとに深刻さを増している。県有明水産振興センターが昨年秋に佐賀県沖で実施したタイラギの生息状況調査では、55カ所の漁場で成貝は1個にとどまった。

 天然のタイラギが少なくなる中、人工的に卵を育てて稚貝にする種苗生産の手法の開発が研究機関で進められてきた。米粒程度の大きさになって着底する前に多くが死んでしまうなど他の二枚貝より難航してきたが、水産研究・教育機構西海区水産研究所(長崎市)が水槽での飼育方法を改良しながら大量生産の技術にめどを付けた。

 新年度からはこの技術を有明海沿岸の各県に移転し、研究所を含めて連携しながら種苗生産に着手する。稚貝を5センチ程度の大きさまで育成した後、底質の環境が良好でナルトビエイの食害を防ぐ漁場に放流する。漁場で成貝とし、産卵して自然繁殖するための「母貝団地」の創出を図る。

 佐賀県では有明水産振興センターで漁獲量がゼロにまで落ち込んだアゲマキの種苗生産に1996年から取り組み、稚貝放流や母貝団地の造成につなげて再生産サイクルの技術を培ってきた。今年2月に計画する本格的な生息状況調査の結果を受け、6月以降に漁獲を一部再開する見通しが出てきている。

 タイラギでも放流の場所や稚貝の大きさなどのデータを蓄積し、最適な漁場を選定するのに佐賀県の成果が生かされるという。西海区水産研究所有明海・八代海漁場環境研究センターの松山幸彦資源培養グループ長は「生産規模の底上げにつなげるためにも各県が協調して有明海全体で再生に取り組む必要がある。人工貝を使って天然資源を復活させる上で佐賀がお手本になる」と指摘する。

 山口祥義知事は「有明海再生のためにやれることは何でもやる。アゲマキやウミタケ、アサリの回復を加速させ、うまくいかなかったタイラギについても本腰を入れていく」と話す。

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