九州比例区で復活当選し、集まった支援者と握手を交わす古川康さん(中央)=23日午後4時49分、武雄市武雄町の事務所

比例代表で復活当選し、支援者らと握手する岩田和親さん=23日午後3時ごろ、佐賀市水ケ江の事務所(撮影・中島克彦)

7月の九州北部豪雨で流れ着いた流木などを回収する漁業者=8月22日、佐賀市川副町の戸ケ里漁港

来場者が詰めかけ、混雑解消のため一時入場制限がかかった池田学展=3月、佐賀市の県立美術館

磐田戦でヘディングシュートを狙うサガン鳥栖MF小野裕二選手(右)=鳥栖市のベストアメニティスタジアム

 佐賀県内でもニュースが尽きなかった2017年。国策課題では、玄海原発再稼働や諫早湾干拓事業の開門問題などで大きな動きがあり、衆院選では自民党候補が選挙区で全敗した。九州北部豪雨は有明海にも爪跡を残し、展覧会やプロ野球では県出身者が躍動した。各分野の担当記者が一年を振り返った。

 

 【座談会出席者】梶原幸司、林大介、原田隆博、谷口大輔、山口貴由、円田浩二、辻村圭介、杉原孝幸、井上武

 

【政治】 

 

衆院選佐賀は自民歴史的完敗

 

 A 政治分野では9月下旬、安倍晋三首相の電撃解散があったね。

 C 突然だっただけに政局は大きく動いた。特に分裂した民進党は県内でも混乱し、現職は結局、1区の原口一博氏が無所属で、2区の大串博志氏は希望の党から出馬した。民進関係者は振り回されていたよ。

 B 自民党の議員は?

 D 現職の岩田和親氏と古川康氏が立候補したけれど、衆院選で初めて県農政協議会が自主投票になったことが痛手だった。特に1区は佐賀市議選と重なり、関係者は「手足をもがれたようだ」と嘆いていた。

 A 台風の影響で、唐津で離島の投票箱が回収できず、開票が1日遅れる混乱もあった衆院選。結果は自民候補が両小選挙区で敗れる歴史的完敗だった。全国的には自民大勝だったから際立ったよね。

 D 自民は2人とも比例で復活し、比例単独だった今村雅弘氏と合わせて解散前の勢力は維持した。でも岩田氏は2度目の比例復活で、次回は原則、比例との重複立候補ができない崖っぷちだ。県連は「危機感は強い」と繰り返し、選挙区改善委員会を設置して立て直しを図っているけど、誰も責任を取っていない。賛否の分かれる国策課題もあり、このままでは次回も厳しい戦いになると思うよ。

 C 希望の大串氏は選挙後、支持率が伸び悩む野党にあって、存在感が増している。共同代表戦に出馬したし、新党結成や野党再編のキーマンになるのは間違いなさそう。民進党県連の対応がどうなるのかも含めて、今後の動向から目が離せないと思うよ。

 B 県内は9自治体で首長や議員の選挙があったけれど、どうだった?

 E 目立ったのは佐賀市長選の無投票。秀島敏行氏が4選を果たしたけれど、県都で38年ぶりの無投票になったのは、一市民として残念だった。オスプレイ配備計画もあるし、選挙戦で具体的な政策を聞きたかった。

 G 唐津市長選は、合併を挟んで14年にわたり市長を務めた坂井俊之氏が引退し、前回市長選で争った元県議の峰達郎氏が初当選した。坂井氏の献金絡みの「政治とカネ」の問題は消化不良のまま終わった印象だね。

 C 7首長選のうち四つは無投票。地方の人材不足と政治離れが心配だよ。

 

【国策課題】

 

オスプレイ事故続き判断保留

 

 A 国策課題はそれぞれ大きな動きがあった。玄海原発の再稼働では1月に原子力規制委員会の「合格」が出て、山口祥義知事は4月に同意した。一連の評価はどうだっただろう。

 C 知事就任以降で、最も大きな判断だった。県内各界の代表で構成する委員会を立ち上げたり、県内5カ所で県民説明会を開いたりした。原発から半径30キロ圏以遠で説明会を開いたのは佐賀県が初めて。原発立地県で佐賀と鹿児島だけ存在しなかった専門家組織も発足させ、前知事よりは反対の声に耳を傾ける姿勢を見せたと思うよ。

 B でも、知事は就任時から再稼働は「やむなし」の姿勢だったよね。経済界は推進していたし、県議会は容認を決議した。結局は、判断しやすい環境で既定路線に落ち着いただけにも見えるけど。

 C 確かに、意見がどう生かされているのか分からないという声はあった。臨時県議会を招集し、自身の判断より先に意思表示を求めたことも、県議から批判の声が上がった。

 A 佐賀空港への自衛隊輸送機オスプレイ配備計画は、県が5月末に論点整理素案を示し、国防に協力する立場を示した。「計画容認」の色合いが濃い印象を受けたけれど、知事は受け入れるつもりだったの?

 D 前向きだったのは間違いなさそうだけど、そう単純ではないと思う。仮に県が受け入れを判断しても、駐屯地候補地の地権者である漁業者が土地を売らなければ実現しないからね。県が7月に各漁協に聞き取りをした際、国への不信感は根強かった。6月県議会では自民党が受け入れを求める決議を提案して可決され、相当なプレッシャーはあったと思うけれど、事故やトラブルが続いて、判断が事実上できなくなったんじゃないかな。

 B 決議といえば、12月に佐賀市議会でも同じ趣旨の決議があったね。

 E 自民系会派は9月にも提出しようとしたけど、米軍機の事故や改選前を理由に見送った経緯がある。12月に決議したとき、事故について国の説明がないままだったから、県議会では賛成した公明が反対に回り、川副町の市議も自民系会派を離脱して反対討論した。どうしてこのタイミングだったのか、疑問は審議でも払(ふっ)拭(しょく)されなかった。

 A 賛成20、反対15で可決したけど、市民の目にはどう映っただろう。

 E 傍聴していた漁業関係者が、可決後に「遺憾」と不快感をあらわにしたのが印象的だった。用地取得の「本丸」といえる県有明海漁業南川副支所が反対姿勢を鮮明にする結果になり、決議に反対した市議は「自民のオウンゴール」と評していたよ。

 B 同じ有明海の漁業者が当事者になる国営諫早湾干拓事業の問題では、国が4月に開門しない方針を明確にした。開門を求める確定判決があるのに、どういうことなの?

 F 長崎地裁で争われていた訴訟で、4月上旬に開門を認めない判決が出て、国はそれに控訴しない形で意思表示をした。敗訴した開門を求めている漁業者側が法的な手続きを取っているので、判決は確定していないけれど、漁業者にとっては不信感と、裏切られた思いが強まったと思うよ。

 D 有明海再生を巡って山口知事は、潮受け堤防にポンプを設置したり排水のルール作りをしたりして、排水問題を解決する必要性を強調している。不信感の払拭が最大の課題になっているオスプレイ配備計画も絡んで、県としては諫早湾干拓事業の問題は何とかしたいところ。でも、国や長崎県との交渉は難航しそうで、複雑な糸がさらに絡まっていく気がするよ。

 A 九州新幹線長崎ルートではフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の開発遅れが決定的になり、JR九州は経済性や安全性を理由に「導入困難」との見方を示した。事実上、自分たちで開発しているのに無責任に思えるけど。

 G これで今後の整備は雲行きが怪しくなってきている。国は年度末までに、与党のプロジェクトチーム検討委員会で、フル規格やミニ新幹線も含めて整備方法の試算を示すことになっている。フル規格への待望論は長崎県だけでなく県内にもあるけれど、県の巨額の追加負担が予想されるだけに到底無理な話だと思う。

 C 長崎と佐賀との思惑が異なる中で、法令や財源の枠組みを超えて、どう落としどころを見つけるのか。まさに政治レベルの話で、これからさまざまな駆け引きが出てくるだろうね。

 

【社会】

自然の猛威、印象づけた豪雨

 B 九州北部豪雨の被害は福岡と大分が中心だったけれど、犠牲者の遺体や流木は佐賀にも流れ着き、自然の猛威を痛感したよ。

 H 沿岸4県は海でつながっている。諫早湾の排水問題もそうだけど、普段から環境保全や防災で協力し合う必要性を考えさせられた。

 A どこでも災害は起こり得る。行政の備えは?

 E 佐賀市は市役所の増改築に合わせて防災室を整備した。ドローンも導入して、災害状況を防災室の大型モニターに映し出せるようにした。迅速な対応を取れるように環境整備を進めているよ。

 B 国内への金の密輸が急増する中、唐津市の漁港も犯行の舞台になった。

 H 検察は、日本人と中国人が手を組んだ「組織的な金塊ビジネス」と説明していた。中国に逃げた中国側の首謀者は摘発を免れたままで、海外に及ぶ捜査の難しさを感じるね。金塊が没収されるかどうかも関心を集めていて、佐賀地裁の判断に注目しているよ。

 B 裁判所で判断が分かれるらしいけど、没収されないケースがあるのは素朴に疑問を感じるね。密輸の抑止策はどうなってるの?

 H 財務省も本腰を入れ始めている。税関検査場の金属探知機設置や、罰金の上限を引き上げる法改正に向けた動きがあるよ。

 B 昨年、福岡市で発生した佐賀銀行支店への侵入事件は、元行員に懲役6年の実刑判決が下されたね。

 H 元行員の借金問題が根底にあって、共犯者に手を貸したのかもしれないけれど、信用問題に発展した佐賀銀行の被害は甚大だった。職員は厳しい表情で、再発防止に取り組んでいると話していた。

 B 県警職員が運転する護送車が対向車と衝突し、乗っていた容疑者が死亡する事故もあった。

 H 護送車が古く、シートベルトが旧式で、頭部への衝撃を和らげるヘッドレストもなかった。運転手が事前に薬を服用していたのに管理が行き届かず、居眠り運転にもつながった。県警は事故を教訓に、運転手の健康を把握するチェック表を作ったりして対策を進めている。事故を抑止するモデルになればと思うよ。

 

【経済・農業】

人手不足の影響広がる

 

 A 国内景気は拡大傾向が続いているというけれど、県内はどうなの?

 D 好調な輸出企業に引っ張られる形で、特に製造業で業績が改善したよ。物価の影響を加味した実質賃金も上昇傾向だけど、収益改善による賃金上昇は限定的。中小企業からは「人手不足でやむを得ず賃上げしているのが実態」といった声が多く聞こえてくる。

 A 個人消費はどう?

 D 社会保障費の負担増とか将来への不安から、家計の節約志向は根強いね。ディスカウント店が増え、大手スーパーを中心に値下げの動きも広がった。景気回復の実感が湧かないという人も多いんじゃないかな。

 A 県内の有効求人倍率は過去最高を更新したね。

 D 有効求職者数は昨年1月から1年11カ月連続で前年割れ。少子化による労働人口の減少が人手不足に拍車を掛けているんだ。流通業界では、営業時間の短縮や休業を迫られるところも出てきたよ。

 B 企業や農業の現場で働く外国人も増えている。課題もあると聞くけど。

 D 技能実習生が最も多く、人手不足を補う貴重な働き手として受け入れる事業者が広がっている。ただ、最低賃金を下回る時給で時間外労働を課せられたり、賃金未払いがあったり。そうした問題が県内でも起きている。技能実習制度は国際貢献を掲げて始まったけれど、「安価な労働力」として製造業や農業の現場を下支えしているのが実態という指摘も根強いね。

 B 日本と欧州連合の経済連携協定(EPA)が12月に妥結。米国を除く11カ国で環太平洋連携協定(TPP)も大筋合意し、市場開放の動きが加速したね。

 D 関税引き下げで、輸出企業で期待が膨らむ一方、安い海外産品との競合にさらされる養豚・酪農業者の危機感は強い。交渉の経緯がほとんど表に出ないまま合意したことに、関係者からは「合意ありきの交渉」という批判の声も上がった。政府はさまざまな農業振興策を打ち出しているけれど、高齢化や割高なコストの影響で総産出額は停滞したまま。国内対策の効果が表れるかは未知数だね。

 

【文化】

「池田学フィーバー」全国でも

 

 A 年初から多久市出身の画家池田学さんの大型個展が盛り上がった。

 B 9万5千人の来場者数は県立美術館の過去最多記録で行列がすごかった。

 F 全国でも「池田学フィーバー」といえる盛り上がりで、金沢展では15万人、東京展では12日間で5万2千人が鑑賞したみたい。佐賀県が購入した「誕生」は、美術館改修後の3月に公開される。多くの人に見てもらいたいね。

 A 12月には有田町の景観が「日本の20世紀遺産20選」に入った。

 C 昨年の創業400年に続いて、地域振興の起爆剤にしてもらいたいね。

 F そうだね。三重津海軍所跡の世界遺産登録や、唐津くんちのユネスコ無形文化遺産登録という形で、県内の歴史や文化の再評価が続いている。登録だけで喜んでいたらもったいない。魅力を発信する材料に、もっと活用しないと。

 G 大林宣彦監督の「花筐」が封切られた。

 H 「オール唐津」で撮影されただけに応援したい。佐賀市のシアターシエマで上映中だ。

 A 少し寂しいけれど、九州佐賀大衆文学賞が24回の歴史に幕を下ろした。

 F 佐賀を愛した笹沢左保さんが、地方からの文化発信を呼びかけた。梶よう子さんとか、輩出した作家を見守っていきたいね。

 A 佐賀市出身の朝夏まなとさんは16年間活躍した宝塚の舞台に別れを告げた。

 F 朝夏さんは今後も芸能活動を続ける。コンサートや「マイフェアレディ」への出演が決まっているよ。来年は鳥栖市出身の木下晴香さんも大作「モーツァルト!」で歌声が聴ける。エールを送りたいね。

 

【スポーツ】

サガン、上位争いの奮闘

 A サッカー・J1のサガン鳥栖は今年も頑張ったね。

 I 昨年より三つ順位を上げて8位。2年目のフィッカデンティ監督の戦術が浸透したことが大きかった。スポーツに「○○だったら…」は禁物だけど、鎌田大地選手が海外に移籍せず、残っていたら面白かったはず。終盤はイバルボ選手や小野裕二選手が絶好調だったから、上位争いにも食い込めたんじゃないかな。

 E サガン鳥栖U-15の日本一もうれしい話題。チームが目指す下部組織からの育成がうまくいっていることを印象付けた。

 A プロ野球は例年以上に県出身者の活躍が注目を集めたね。

 I DeNAの2人がすごかった。厳木高出身の宮崎敏郎内野手が首位打者のタイトルを獲得し、三養基高出身の濵口遥大投手は新人ながら10勝を挙げた。3年目の広島・緒方孝市監督はリーグ連覇を果たし、初采配となった西武の辻発彦監督はチームを4年ぶりのAクラスに引き上げた。

 A アマチュアスポーツはどうだったのかな。

 I インターハイは新体操男子団体の神埼清明が優勝したけど、日本一はこの一つだけ。えひめ国体は、優勝が四つあったけれど、天皇杯の総合順位は3年連続で43位だった。6年後には佐賀国体がある。絶対に優勝をとは思わないけれど、大会を盛り上げるためには、もっと強化を進めていく必要があると思う。

 A 2020年の東京五輪・パラリンピックに向けた動きも活発化してきた。

 I 県と佐賀市、嬉野市はオランダ、フィジー、ニュージーランドのホストタウンとして国から登録され、事前合宿の誘致に本腰を入れている。8月には早速、ユニバーシアード大会を控えたニュージーランドの陸上代表が県内で合宿を組み、小中学生向けの陸上教室も開いてくれた。世界の人たちとの交流を地域づくりにつなげたいね。

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