県内各地で広がり始めている「うたごえ喫茶」=吉野ヶ里町石動のいしなりの森

きんりゅうケアセンター桂寿苑(佐賀市金立)が作成した歌本

 地域交流と認知症予防などを目的にした「うたごえ喫茶」が、佐賀県内各地で、少しずつ広がっている。引きこもりがちな高齢者が外出するきっかけになったり、介護者同士が情報交換する場になったりと、相乗効果も生んでいる。

 12月中旬、神埼郡吉野ヶ里町のグループホーム「いしなり」に隣接する集会所に伸びやかな歌声が響いていた。11月に続く2回目の「うたごえ喫茶」に集まったのは、グループホームの利用者や地域住民ら約40人。「リズムを取り足を動かしましょう」。童謡や歌謡曲を、声を合わせ歌った。

 輪の中心にいた森久美子さん(70)=認知症の人と家族の会県支部代表=が、懐かしのメロディーを一緒に歌う取り組みを、約5年前から育ててきた。森さんが支援する「うたごえ喫茶」の初回は2012年10月、佐賀市金立町の「きんりゅうケアセンター桂寿苑」だった。

 ケアセンターでの開催は17年12月で62回を重ねた。50代から90代まで、平均60人が集う。参加無料で始めたが、「こんなに楽しくて無料は気の毒」と参加者から声が上がり、200円に変更した。センターはお茶と手作りの菓子を準備して参加者と楽しいひとときを過ごす。

 凌文子苑長(75)は「無理ないように来てくださいと声を掛けるけど、暑くても寒くても『月1回の楽しみだから』と出掛けて来られる」と話す。初参加の友達を連れてくることも多い。「どうしても行きたい」と前日、入院先の病院を退院した人もいたという。

 会の終わりに参加者からリクエストを受け付けたこともあって、曲目は約250曲にまで膨らんだ。手作りの歌本には『夏の思い出』『ペチカ』などが並ぶ。

 「歌は昔の情景、記憶を呼び起こす。頭の働きを促し、介護予防にもつながる」と森さん。佐賀市木原の住宅型有料老人ホーム「アイケアレジデンス佐賀」でも2年半以上継続し、職員は「ほかの施設スタッフも、うちでもやれないかと興味、関心を持っている」という。

 佐賀市や小城市の公民館などでも「うたごえ喫茶」の準備を進めている地区があり、森さんが立ち上げに関わる。「歌は、人の心をつなぐ。少人数からでもできるので、興味のある人と一緒に広げていきたい」

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