不育症に悩む女性。医療機関に通い、エコー検査を受けている

 妊娠をしても、流産を繰り返して出産に至らない「不育症」。厚生労働省の研究班によると、適切に治療すれば、約8割は出産が可能とされる一方、一部は保険適用でないため、高額な治療費を余儀なくされているという。胎児を失った精神的ショックに加え、経済負担も重圧になっている。佐賀県内の自治体では、望んでも妊娠に至らない「不妊症」の助成は広がっているものの、不育症への助成は現在、嬉野市だけにとどまっている。

 「身体的にも精神的にもダメージになる」。不育症に苦しむ県内在住の40代女性は、心の内を打ち明けた。最初の妊娠は25歳のころだったが、妊娠から7週目で流産。その後、40歳で結婚して4年間、自然妊娠や体外受精による妊娠回数は8回に上ったが、流産を繰り返した。専門医に不育症と診断されたのは、昨年9月だった。

 女性は、排卵日から1日に2回、決まった時間に、不育症の原因の一つである血液凝固を防止するため、ヘパリン自己注射をしていた。妊娠中、胎盤に血栓ができることを予防する目的で、血液の流れを良くし、胎児に酸素や栄養を供給しやすくする。自己注射を繰り返していた女性の腹部には、注射によってできた内出血の跡が残る。

 不育症と診断されても、治療の一部は保険適用が難しいという。流産の原因となる染色体の異常を調べる「着床前診断」や、流産した後に行う「染色体検査」で原因を調べることができるが、高額な費用のほか、母胎にも負担がかかり、次の妊娠がしづらくなるリスクが伴う。

 そのため、女性は検査費や治療費、県外の病院へ診察に行く交通費などがかさみ、4年間で合わせて約800万円を費やした。女性は「40歳までに貯金したお金や結婚祝い金、夫の預金を使って工面した」と明かすが、いまも出産には至っていない。

 厚労省の研究班によると、日本で不育症に悩む女性の数は正確には分かっていない。ただ、3回以上流産した経験のある女性は0・9%で、妊娠する女性のうち、毎年数万人に不育症の可能性があるとしている。

 県内では嬉野市が2015年4月から不育症への助成制度を設けた。補助の上限は30万円。専門医から不育症と診断を受けた市内の女性が対象となる。市健康づくり課は「不妊症だけでなく、不育症に悩んでいるとの声もあった。出産できる環境を整えたい」とする。これまで実際に補助した女性はいないという。

 経済的支援制度が嬉野市だけにとどまっている現状について、県子ども家庭課は「不育症に関する相談員の研修は行っているが、現段階で不育症の助成は検討していない」としている。

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