弟子の平幕貴ノ岩関が元横綱日馬富士関から暴行を受け負傷した事件で、日本相撲協会の危機管理委員会による事実確認の聞き取りを拒み続けた貴乃花親方が、協会理事会によって理事解任の厳しい処分を決議された。

 決議は勧告として、年明け早々の評議員会に諮られる。評議員会は理事会の決定を尊重するとみられ、理事解任により貴乃花親方は自動的に巡業部長も退くことが事実上決まった。

 危機管理委はこれに先だって、被害者の師匠であり、協会の巡業部長であるにもかかわらず、事件後の速やかな報告義務を怠ったと指摘していた。また、横綱審議委員会の委員長は「言動は非難に値する」と述べ、厳しく批判していた。

 法令順守と相いれない行動を続けた理事に対し、公益財団法人である相撲協会は今回、適切かつ相応な制裁を科すことを決議したとみるべきだ。

 大相撲に限らず、暴力はスポーツの価値と魅力に大きなダメージを与える。国際オリンピック委員会(IOC)をはじめ、内外の多くの競技団体が近年、倫理規定の整備と、その厳格な適用に取り組んでいるのは、そのような危機管理の考えが背景にある。

 今回のような重大な事案が持ち上がったなら、関係者全員が事態の究明のため調査に協力する。これが法人格を持つ組織の現在の標準であり、法令順守というものだ。

 相撲協会も11月から危機管理委による事態の究明に乗り出したのに、貴乃花親方は理由を示すこともなく、貴ノ岩関と自身への聞き取りを拒否し続けた。調査への協力は、相撲協会の全会員の義務であり、責任と定められていたにもかかわらずだ。

 理事のこのような不適切な行動に対し、相撲協会が曖昧な対応を取れば、それこそ協会は公益法人として失格ということになる。その意味で、解任決議以外の選択肢は理事会にはなかった。

 元日馬富士関による暴行の直後に、貴乃花親方が八角理事長ら同僚理事に報告していれば、そして危機管理委による貴ノ岩関への聞き取りを受け入れていれば、事件はもっとずっと早く解明できたはずだ。

 今回、貴乃花親方は理事会が処分の検討を始める前に、釈明の機会を与えられながら、その権利を行使しなかった。なぜなのだろう。

 規則による処分としての理事解任決議を受け入れれば、それですべて終わりということではない。最終的に処分を決める評議員会だけでなく、全国の大相撲ファンも、親方本人から今回の行動について、説明してほしいと望んでいるのではないか。

 無口な横綱であることはもちろん構わない。しかし、現役を引退し、いったん部屋の師匠となれば、自身に関係する問題について説明責任を問われる存在となる。

 ファンの疑問に答え、大相撲の信頼を回復するためにも、貴乃花親方には自らの言葉で背景を話してもらいたい。

 かつて絶大な人気を博し、「平成の大横綱」とも呼ばれ、優勝22回を誇る師匠は、貴ノ岩関のほかにも来年初場所での小結昇進が決まっている貴景勝関らを順調に育てている。

 だからこそ、協会と貴乃花親方との間にこれ以上大きな亀裂ができることを誰も望んでいない。(竹内浩)

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