2年前からセミセルフレジを導入しているスーパーモリナガ。人手不足が深刻化し、県内の半数の店舗で営業時間も短くした=佐賀市川副町

縫製工場で働くベトナム人技能実習生。人手不足を背景に、県内でも受け入れが増えている=2017年1月、県内

常時約800頭を飼育する養豚農家。安価な欧州産豚肉の流入を懸念する=唐津市

欠陥エアバッグ問題で経営破綻したタカタ九州。来年1月にも示される再生計画案に注目が集まる=多久市

ドライバー不足が深刻な運送業界。取引企業と運賃引き上げ交渉を始める企業も出てきた=神埼郡吉野ヶ里町のミヤハラ物流

 国内景気の拡大が続いた2017年。高度成長期の「いざなぎ景気」を超え、戦後2位の長さに達したとされる一方、個人消費は力強さを欠き、将来不安で支出を控える傾向が強い。人手不足で好況の波に乗れない企業は多く、成長の足かせになる可能性も出てきた。

 佐賀県の有効求人倍率、外国人就労者数は過去最高を記録した。人材確保が難しい流通業界は営業時間の短縮や休業を迫られ、運送業界では宅配便大手に追随し、運賃値上げに踏み切る動きも。

 日欧EPA(経済連携協定)の交渉妥結を巡っては、期待と不安が交錯した。欠陥エアバッグ問題によるタカタ九州(多久市)の経営破綻をはじめ、日産自動車など企業の不正発覚が影を落とした。県内経済のこの1年を振り返る。

■人手不足 営業時間短縮、休業も

 少子化や景気の回復を受けて企業の人手不足が深刻化した。外食や小売業を中心に営業時間を短縮したり、休業を迫られたりするなど影響が拡大。景気改善のリスクになりつつある。

 佐賀市のイオン佐賀大和店にテナントとして入る飲食店は3月、週1回の休業を決めた。年中無休の商業施設では異例の対応。アルバイトの時給を830円から千円に引き上げても応募がなく、経営者は「苦渋の決断だった」と振り返る。

 佐賀、福岡で10店舗を展開するスーパーモリナガは、半数の店で閉店時間を1時間早めた。セルフレジも導入し、従業員の負担軽減に取り組む。

 県内の有効求人倍率は9月に過去最高の1・29倍を記録。8カ月連続で1・2倍を超える高水準が続く。有効求職者数は昨年1月から1年11カ月連続で前年を下回り、労働人口の減少が人手不足に拍車を掛けている。

 佐賀新聞社が実施した企業経営動向調査(7~9月期)では、「労働力不足」を経営上の課題に挙げた企業が初めて50%に上った。すべての業種が課題に挙げ、特に運輸・通信や建設、サービス・レジャーで深刻さが増している。

■外国人急増 実習生「貴重な労働力に」

 県内で生活する外国人が急増した。2017年の推計人口は10月1日時点で前年比17・7%増の6248人。この1年で1108人増え、全国最高だった昨年の増加率を上回った。このうち最も多いのが、技能実習生の1863人。企業の人手不足を背景に昨年から426人増え、36・2%を占めた。

 少子高齢化が進む日本にとって、技能実習生は大切な働き手となりつつある。一方で、最低賃金を下回る時給で時間外勤務を課せられたり、賃金未払いがあったりするなど「安価な労働力」として受け入れられている実態も浮かび上がる。

 厳しい環境に置かれながらも、多くは「金を稼ぐため」と耐えているとみられ、実習生を巡る問題は表面化しにくい。職場や地域で「共生」に向けた意識の醸成が必要になっている。

 県内を訪れる外国人観光客も増えた。県内の延べ宿泊数は9月末で前年同期比63・8%増の27万8970人。過去最高だった16年の実績を既に上回った。

 都市部中心の買い物から、自然や文化を楽しむ観光に重点が移ってきており、外国人スタッフを採用し、誘客に力を入れる宿泊施設も出てきた。

■不祥事拡散 タカタ経営破綻、負債55億円

 製造大手の相次ぐ不祥事に県内も揺れた。欠陥エアバッグ問題でタカタ九州(多久市)が6月に経営破綻。無資格検査が発覚した日産自動車とスバルは新車の販売が減少した。神戸製鋼所の製品データ改ざん問題は、玄海原発3、4号機の再稼働延期へと発展した。

 タカタ九州の負債総額は2017年3月時点で55億円。県内製造業では1977年に倒産した合板メーカー「バンボード」の110億円に次ぐ規模となった。

 従業員の雇用は維持される見通しだが、タカタは取引先の重要度に応じて債務の返済に差を付ける方針を示している。帝国データバンクによると、タカタと取引する県内企業は22社。来年1月に示される予定の再生計画案に注目が集まる。

 無資格検査が9月に発覚し、国内工場の生産・出荷を停止した日産の県内新車販売台数は大幅減。出荷を続けていたスバルも1年ぶりに前年を割り込んだ。

 神戸製鋼所のデータ改ざんを受け、九州電力は玄海3、4号機の再稼働時期をそれぞれ来年3月、5月に延期すると発表。新規制基準に基づき設置した設備の安全確認に時間がかかるためで、不適切な製品が使われていないかを調べている。

■EPA妥結 輸出追い風値崩れ懸念も

 日本と欧州連合(EU)が交渉を妥結した経済連携協定(EPA)。輸入品にかかる関税の相互撤廃・引き下げなど大半の分野で7月に合意しており、2019年の発効を目指す。県内では製造業から期待の声が上がる一方、価格が安い海外産との競合にさらされる養豚・酪農業者は不安を口にした。

 日本の関税撤廃率は全品目の94%に上る。EUは日本の乗用車に対する関税を8年目に撤廃し、日本酒や緑茶など幅広い食品もゼロになる。世界の国内総生産(GDP)の3割を占める巨大経済圏が誕生するだけに「環境性能の高い日本車、日本酒、うれしの茶を売り込む好機」とそれぞれの関係者は歓迎する。

 一方で、スペインやデンマーク産の豚肉やチーズが安く入ってくることに懸念は強い。「豚肉は牛肉に比べて品質差が少ないため脅威しかない」。県内の養豚農家は、加工設備の投資に慎重にならざるを得ないと心境を吐露する。

 輸入チーズの増加でチーズに使われる北海道産牛乳が飲用に回り、値崩れを心配する酪農家もいる。今後、政府がどんな支援策、戦略を示していくのか動向が注目される。

■運賃値上げ ドライバー不足解消狙う

 宅配便大手で運賃引き上げの動きが広がる中、県内でも値上げに踏み切る企業が出てきた。荷物量の増加でドライバー不足が深刻になっているためで、値上げによる増収を賃金に反映し、人手不足の解消を狙う。

 宅配業界は、インターネット通販の拡大で荷物量が急増、ドライバー不足に拍車が掛かった。人件費や外部委託費が膨らみ、最大手のヤマト運輸は10月、27年ぶりに運賃を値上げした。

 2位の佐川急便に続き、3位の日本郵便も来年3月からの値上げを決定。こうした大手の動きに追随し、九州一円で食料品などを配送するミヤハラ物流(神埼郡吉野ヶ里町)は、一部取引先で3~5%の値上げを実施した。

 県内で事業を展開している運送業者は約500社。規制緩和で新規参入が相次ぎ、顧客の獲得競争は激化している。ほかにも値上げを検討する動きはあるが、都市部に比べて荷物量は少なく、実施は限定的との見方もある。

 ただ、人手不足の影響は長時間労働やサービス残業の常態化につながる恐れがある。県内でも労働局や荷主企業、労働組合などを交え、処遇改善に向けた議論が進んでいる。

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