女性歌手の引退で記憶に残るのはキャンディーズ。伊藤蘭さんの「普通の女の子に戻りたい」は流行語になった。山口百恵さんはまだ21歳。引き際があまりにも鮮やかだった。そして今年、安室奈美恵さん(40)のニュースも世間を驚かせた◆ひと昔前、女性歌手はスターとしての虚像と、人として幸せになるという実像の共存が難しかった。安室さんは人気絶頂の20歳で結婚、妊娠、休業を発表。「音楽も人生も」を実現し、等身大ながらキラキラしたアイドルにファンは共感した◆伸びやかな歌声に、圧倒的なダンス・パフォーマンス。1990年代は彼女の時代だった。そういえば、東京勤務だった20年ほど前の渋谷や原宿の街には、茶髪に厚底ブーツの「アムラー」がたくさんいた◆休業に向けて紅白で活動を締め、1年後に再び同じ舞台で復帰した。「お帰りなさい」の拍手に、歌姫の頬を涙が伝う。もらい泣きした人は少なくなかろう。歌い手としてはもちろん、ファッション、メーク、生き方が同世代の女性たちに影響を与えた。社会現象にまでなったのは、松田聖子さん以来とみる◆安室さんは来年9月の引退を前に、14年ぶりに大みそかの紅白に出場する。引退コンサートのチケットが手に入らないファンのためともいわれる。テレビの前で「頑張ったね」と言ってあげたい。(章)

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