© 2017映画「8年越しの花嫁」製作委員会

監督 瀬々敬久『64-ロクヨン-』

出演 佐藤健、土屋太鳳、杉本哲太、薬師丸ひろ子 他

配給 松竹

 

 

切なさと喜びが胸に迫る、あるカップルの8年間の軌跡

 病で意識不明になった女性と、彼女の回復を待ち続けた男性との物語『8年越しの花嫁 奇跡の実話』。実は、見る前は「いわゆる“難病もの”でしょ?」と斜に構えていたが、それが恥ずかしくなるくらい、心に響いてくる映画だった。

 物語は主人公のカップル、麻衣と尚志の出会いから交際、婚約までとんとん拍子に進む。ところが麻衣が原因不明の病に倒れ、昏睡状態に陥った。回復の見込みが立たないまま、彼女の目覚めを信じて毎日病院へ通う尚志。決めていた結婚式場もキャンセルせず予約を続行する。やがて、ついに麻衣が目覚める。しかし喜びもつかの間、彼女の記憶からは尚志のことだけ抜け落ちていた…。

 尚志に負担をかけることを案じて「娘のことはもう忘れて」という麻衣の両親。目覚めた麻衣が自分のことを思い出せないことで、彼女にプレッシャーをかけているのではと落ち込む尚志。どちらの気持ちも分かって切なくなるのは、抑えた演出だからこそ。起こったことをそのままに描くことで、彼らの心情を感じる余裕を与えてくれるのだ。明朗快活なイメージの土屋太鳳が病に苦しむ女性を、イケメン人気俳優の佐藤健が普通の男性を控えめに演じていることも大きいかもしれない。

 麻衣の病気は、意識障害を伴う“抗NMDA受容体脳炎”というもので(偶然にも、同じ病にかかった米国の女性の映画も公開される)、闘病は壮絶であっただろう。それを劇的に描くより、“待つ”側の8年間をていねいにつづっていく。このカップルが実在して、幸せに暮らしている奇跡が、こちらの心を喜びで満たし、じんわりと温かくさせてくれる。

(シネマライター・KAORU)

Side Story

一本の動画から映画化へ

© 2017映画「8年越しの花嫁」製作委員会

 麻衣さんと尚志さんが結婚式を挙げた式場がYou Tubeに動画を投稿、その後二人の軌跡が書籍化されたことで、テレビドキュメンタリーなどメディアに取り上げられ注目を浴びた。映画化により、あらためて信じること、愛することという普遍的なメッセージを受け取ることができる。

このエントリーをはてなブックマークに追加