元行員による高額預金者の情報流出を巡る会見の冒頭、謝罪した佐賀銀行の陣内芳博頭取(右)=6月、佐賀市の佐賀銀行本店

 年の瀬が迫る12月中旬、長崎県内の佐賀銀行支店。本店から訪れた経営管理部の職員が、顧客情報の取り扱い方で心構えを説いた。「お客さまの情報は現金以上に重い」。佐賀、福岡を含めた3県で今年5月から取り組んできた巡回指導。この日にようやく全103店舗を回り終えた。

 発端は元行員の男(43)が関与した事件。ヤミ金業の男らと共謀して昨年8月、福岡市内の箱崎支店に窃盗目的で侵入し、10月には干隈支店から現金5430万円を盗んだ。さらに、預金額1億円以上の顧客169人分の情報が記載された名簿を男に手渡した。

 元行員には多額の借金があり、公判ではヤミ金業の男に脅されたと主張した。支店の内部情報や鍵を男に提供したとされ、福岡地裁は今年10月、「行員の地位を利用し、極めて不可欠かつ重要な役割を果たした」として、元行員に懲役6年の判決を言い渡した。

 代償は大きく、佐賀銀行の信用問題に発展した。顧客情報の流出が5月に発覚して以降、銀行は対象の顧客を訪問し、謝罪した。それでも解約や他行への移し替えは十数件に上り、総額は10億円を超えたという。「正直に申し上げて非常につらい1年だった」。陣内芳博頭取は、今月21日の今年最後の定例会見で声を絞り出した。

 再発防止策を進め、閉店後の行員の再入店や、私用の携帯電話の持ち込みを禁止した。情報流出を防ぐため、顧客情報を検索できる権限を一部の役職に限り、くだんの巡回指導を重ねてきた。「長年の歴史で育んできた信用の回復は地道にやっていくしかない」。職員は厳しい表情で話す。

 県内の別の金融機関は事件が明るみに出て以降、職員に記事を配って概要の周知を図った。借金が犯行の動機につながった側面があることから、職員を対象にした定期的な面談に力を入れるようになったところもある。「生活状況を把握することが大事。手を差し伸べれば、きっと防げる」。事件を他山の石として、教訓化する動きは広がっている。

■佐賀銀行多額窃盗事件 佐賀銀行の干隈支店(福岡市)で昨年、男らが侵入して現金5430万円を盗むなど、支店を狙った事件が相次いだ。元行員の男(43)が、内部情報や支店の鍵を共犯者に提供したことが判明し、元行員を含む9人が有罪判決を受け、1人の公判が続いている。

=おわり=

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