新企画を考えるときのポイントを語る竹下真由さん=佐賀市のさがレトロ館

参加者たちが「どんな時に幸せを感じるか」を考えるのを眺める竹下真由さん(右奥)=佐賀市のさがレトロ館

7つの味が楽しめるマシュマロについてプレゼンテーションする参加者ら=佐賀市のさがレトロ館

グループで話し合いながら佐賀のお菓子を企画する参加者たち=佐賀市のさがレトロ館

 「道を弘(ひろ)げる」-。若者の夢のきっかけをつくる21世紀の藩校、「弘道館2」の2講義目が11月25日、佐賀市のさがレトロ館であった。竹下製菓(小城市)の竹下真由社長を講師に迎え、「企画術」をテーマに佐賀を盛り上げるお菓子をプロデュースする授業を開いた。県内外から参加した33人は、竹下さんの生い立ちや商品企画などの話に熱心に耳を傾けた。その模様を紹介する

【前編】

【後編】

https://www.youtube.com/watch?v=-CqUcjk5Exw

 

◆ロボコン愛

 小学2年生の時、ロボコンの大会をテレビで見て興味を持った。小学4年生のときに母親に頼み込んでロボコンに出場していた東京工業大学の願書を取り寄せてもらった。それほど夢に見た大学に1年浪人して入った後、2年生で国内大会に出場し準優勝。米国のコンテストにも出場した。ロボコン出場の夢を達成し「大学にいる意味を失った」。だが、いずれ佐賀に帰ってビジネスをするため大学で学ぶことは幅広いと考え直し、「経営工学」という経営の道にかじを切って勉学に励んだ。

◆がむしゃらに働く

 大学院を卒業後、「すぐに入社しても社長の娘としか見られず周囲は厳しく指導できないはず。他社を知らないと竹下製菓でしていることは正しいのかは分からない」と外資系のコンサルティング会社に入社した。「とても忙しいから」。同社に入社した決め手をそう語った。竹下製菓を継ぐまでに与えられた年月は約5年。「その貴重な5年間を無駄にせず、がむしゃらに仕事をしたい。人の2倍経験を得られるならここで仕事をしたい」と強い思いで就職した。

◆殻破るタイミング

 就職後は「やはり忙しかった」という。バランスを取るのが難しく、「仕事をする意味に納得できないときは体調を崩した。一方で、自分がやりたくてしている仕事には疲れを全然感じなかった」と振り返る。「客にとっては完成度が50%でも100%でも分からないが、120%の何かが乗せられると反応が違う」。「その一瞬の喜びがあって夜中頑張ってしまう時も。忙しいけど調子が良くて楽しいと思えた」。「ハードルを越え、自分の殻を破れるタイミングがある。若くて体力のある時に、勝負の時は突き抜けてやってもらいたい。それが今後の自信になる」と語りかけた。

◆菓子会社でアイスを

 菓子の会社として創業し、順調に進んでいた竹下製菓だが、日本経済の不況などの影響で倒産した過去も。原材料が手に入りづらかった戦後の1945年、ドングリを拾って水あめを作り再起を図った。苦しい時代を経てさまざまなアイデアを生み出し竹下製菓は1958年にアイス業界に参入。菓子作りで培ったあんこを炊く技術をアイスに応用し、初めて作ったのが「あずきアイス」だった。

◆ブラックモンブラン

 1969年5月7日、ブラックモンブランがついに誕生。当時は量産機で中のバニラアイスだけを作り、回りのチョコやクッキー生地は手作業でつけて作った。3代目社長が経済視察で欧州に行った時、アルプス山脈を見て「真っ白い雪山にチョコレートをかけて食べたらさぞおいしいだろうな」と考えたことが商品開発のきっかけになったという逸話を紹介した。竹下さんは「全ての経験は何かに生かされると教えてくれるエピソード。(自分の経験は)ささいなことだと思うかもしれないが、(企画する時は)ささいなことをどう生かすか考えてみて」と企画を考えるときの心得を話した。

 

■佐賀を好きになるお菓子考える

「自分が楽しめるか」大事

 「新しいものなのか」「やることで人を幸せにするか」「自分がわくわくするか」。竹下さんは、新企画を考える時に心掛けている三つのポイントをこう伝えた。「五感に働きかける新しさや驚きがあり、人に伝えたくなるような話題づくりに一役買うのも大事な要素」とアドバイス。中でも三つ目が一番重要だといい、「自分が楽しめるものではないとあなたがやる意味がない」と訴えた。

 ワークショップでは、「幸せと感じるときはどんな時か」「佐賀の好きなところ」「佐賀っぽいところ」など各3分間でそれぞれ考えて紙に書き出した。それを踏まえ、「もっと佐賀を好きになるお菓子」をグループに分かれて考えた。初対面の人たちと20分で新アイデアを練るというハードスケジュールだったが、参加者らはアイスやお菓子を味わい楽しみながら取り組んでいた。

 

■アイデア発表会

特産品盛り込み斬新商品も

 発表会では、佐賀の特産品を盛り込んだアイデアが出た。七つの味があり、ちぎって味わう「家族団らんのマシュマロ」は嬉野茶、小城ようかんなど佐賀らしい味のほか、「バルーンの空味」「八賢人味」など斬新なアイデアを盛り込み、ほかの参加者らからも「面白い」と好評だった。

 ほかにも、味付けしていない煎餅に佐賀牛のそぼろや嬉野茶のパウダーをかけるなど、食べる人が味つけして味わう体験型のお菓子、バルーンの形をしたチョコフォンデュなど個性が光る新商品のアイデアを生み出した。

 発表会後、竹下さんは「みなさん楽しそうに話していて、盛り上がっていたみたいでよかった。佐賀の良さが詰め込まれていると思った。(今回の企画で)商品化にはいくつかハードルがあるかもしれないけど、非常にいい提案が多かった」と講評した。

 

■参加者の感想

「企画の面白さ確認できた」

 商品開発に興味があって参加したという佐賀大学農学部3年の倉本圭偉さん(21)は「グループで考えたことで自分にない発想もあって視野が広がった。就職活動中で迷いもあったけど、改めて企画することの面白さを確認した。何かを創り出す仕事に就きたいと思えた」と話した。

 授業で企画を考えることがあるという佐賀大学の芸術地域デザイン学部2年の山林満帆さん(20)は「竹下さんの人生を聞いて勉強になった。授業では知り合いで長い時間で考えるけど、初対面の人と短時間で考えるのには瞬発力が必要だったけど楽しかった」と語った。

 

=弘道館2とは= 

 「弘道館2」は、幕末佐賀で多くの偉人を輩出した藩校・弘道館を再現し、若者を対象にさまざまな分野で活躍する県内ゆかりの講師を招いて学ぶ講座。来年開催の肥前さが幕末維新博覧会のプレイベントとして開かれた。コーディネーターは電通の倉成英俊さん。 

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