師走の凍(い)てつく夜に、小料理屋で熱燗(あつかん)を頼んだら年代物の「燗銅壺(かんどうこ)」で出てきた。骨董市(こっとういち)で手に入れたという。炭火などの熱源と銅の容器を組み合わせたもので、容器に水を注いで熱し、そこに徳利(とっくり)をつけて湯せんするのである◆人肌に温められた日本酒の味は格別。当然のことながら想像を裏切らなかった。江戸か明治のころの発明だろうが、便利なこの時代だからこそ用いたくなる。平安時代の文献に、初めて燗酒は登場する。燗徳利が流行(はや)るのは、もう江戸も後期のことだ◆そのころ、食通として知られた儒学者の羽倉簡堂(はくらかんどう)は「ふところに徳利を入れて温めた酒ではやわらかすぎ、直火(じかび)にかけては烈(はげ)しすぎ、湯せんしたものが最もいい」と言っている◆忘年会も追い込みに入り、正月、新年会とお酒を飲む機会は続く。生命保険会社の調査で、職場の仲間とお酒を飲みながら親交を深める「飲みニケーション」が必要との回答は6割強だった。本音が聞けて、距離を縮められるというのが理由だが、若手や女性は「不要」との答えがやや高く、敬遠気味の姿勢もうかがえる◆ほどよく酔い、楽しく語り合えれば、そう悪いものでもなかろう。うれしいことに佐賀は米どころとあって、26の蔵元のおいしいお酒がある。酒器も有田焼、唐津焼…と事欠かない。では今宵(こよい)も、一杯といきますか。(章)

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