2017年の佐賀県農業界は「変化」を象徴する出来事が続いた。JA佐賀中央会では14年ぶりにトップが交代、新設された県JA会館で新体制がスタートした。JAさがは時代の変化に対応するため持ち株会社を設立。約50年間続いてきたコメ政策の転換に向けた準備も着々と進んでいる。

 漁業は、依然として有明海再生への道筋が見えず、国策に翻(ほん)弄(ろう)される漁業者の厳しい立場が改めて浮き彫りになった。県内農業、漁業のこの1年を振り返る。=文中の年齢は当時

 

JA人事

14年ぶりにトップ交代

通常総会後に握手を交わす中野吉實氏(右)と金原壽秀氏。中央会のトップ交代は14年ぶりとなった=6月、佐賀市の県JA会館別館

 JAグループ佐賀のトップが6月、14年ぶりに交代した。佐賀の農業界を長年けん引してきた中野吉實氏(69)が任期満了でJA佐賀中央会と連合会の会長を退任し、JAさが組合長の金原壽秀氏(67)が新たな会長に就いた。

 中野氏は1980年に32歳で久保田町農協(当時)組合長に就任し、若い頃から農業経営の手腕を発揮。佐賀牛ブランドを確立し、農業振興と組合発展に努めた。2003年から中央会会長を6期、11年からは県出身者で初めて農協の経済事業を担う全国組織・JA全農の会長を2期務めた。

 金原氏は8月、農協の指導的役割を担うJA全中の副会長にも県出身者として初めて就任。県中央会の会長が2代続けて全国組織の要職を担うことになった。地域の声をいかに中央に届けるか、リーダーシップに期待がかかる。

 JAさがの新組合長には大島信之氏(64)が就任。JA伊万里組合長は岩永康則氏(64)が再任された。

 

漁業

ノリ14季連続日本一

ノリ漁は14季連続日本一を達成。販売額は史上2番目の249億円となった=4月、佐賀市の佐賀海苔共販センター

 佐賀県沖の有明海で養殖されたノリが販売枚数、額ともに14季連続で日本一となった。全国的な品薄傾向で販売額は249億円と史上2番目に高かったが、県西南部地区を中心に赤潮の常態化によるノリの色落ち被害が深刻だった。

 今季の秋芽ノリの初入札会は、平均単価が22円50銭と26年ぶりに20円台となる好スタートを切った。ただ西南部地区を中心に色落ちが出始めており、今月18日には国営諫早湾干拓事業の排水方法に抗議する漁業者の海上デモが行われた。

 二枚貝は、アゲマキやウミタケで資源回復の兆しが見られる一方、タイラギは県の調査で成貝が1個しか見つからないなど厳しい状況が続き、6季連続休漁となった。

 諫早湾干拓事業は国が開門しない方針を明確にし、佐賀空港への自衛隊輸送機オスプレイ配備を巡っては、県議会や佐賀市議会が受け入れ容認を決議した。「宝の海」を舞台にした混迷は来年も続くことになる。

 

コメ政策

減反見直しで「目安」策定

さがびよりの稲刈りをする生産者。18年産米からは、国による生産調整が廃止される=10月、武雄市

 2018年産米から国による生産調整(減反)が廃止される。佐賀県では、県やJAなどでつくる県農業再生協議会(会長・金原壽秀JA佐賀中央会会長)が18年産米の県全体の生産目安を策定。国による17年産の生産数量目標と同じ13万5471トンを示した。

 国は生産調整が農業者の創意工夫を妨げていると判断し、18年産から目標の策定、配分をやめ、全国の需給見通しの提示にとどめる。生産調整に協力した農家への10アール当たり7500円の交付金も廃止する。

 ただ、コメの消費量は全国で年間8万トンずつ減少。今後も大幅な需要拡大が望めない中、米価の下落を防ぐためにも需給調整が必要として、ほとんどの道府県の再生協が目安を定める。

 制度は事実上温存される格好だが、消費地に近い首都圏近県などの動向がつかめない部分もあり、半世紀続いてきたコメ政策の転換の影響は不透明さが残る。

 

新規就農

育成研修施設が完成

新規就農者育成のために整備されたキュウリのトレーニングファーム。3組4人が栽培技術や経営を学んでいる=10月、武雄市

 次代を担う新規就農者育成の取り組みも始まった。

 JAさがみどり地区管内の武雄市に、キュウリ農家の育成研修施設「トレーニングファーム」が10月に完成。1期生3組4人が最先端の設備を備えた施設で2年間、栽培技術や農業経営のノウハウを学んでいる。

 県やJAさが、関係市町などでつくる推進協議会が運営し、トップレベルの技術を持つ県OBや県農業士が指導。地元の生産部会もサポートする。来年1月には佐賀市にホウレンソウの研修施設も完成予定。県は研修生が地域に定着し、指導する側に回って産地を築く好循環を期待する。

 

自己改革

JAさが、持ち株会社設立

JAグループ佐賀の拠点として新築された県JA会館。「自己改革」の歩みをさらに強める=佐賀市

 競争力強化を掲げた政府の農業・農協改革が進められる中、「自己改革」の一環として全国の地域農協で初めて打ち出したJAさがの取り組みが注目を集めた。7月、グループ15社のうち9社を傘下に置く持ち株会社(ホールディングス、HD)2社を設立。業務の効率化を進め、商品開発にも力を入れる。

 持ち株会社化は、「農協の一員としての自覚とガバナンス(企業統治)の強化」「事業統合によるコストダウン」「会社の枠を越えた商品開発」の3点が主な目的。農業者の所得増大、生産の拡大につなげる。

 JAさが食品HDはOEM(相手先ブランドによる生産)のほか、独自ブランドを開発し、地域の農畜産物を全国に発信。JAさがアグリ・ライフHDは、農家の繁忙期に人的支援をしたり、農業経営に参画して農地を活用したりして担い手育成にも努める。

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