街はクリスマスムード。あすはイブである。この祝祭が日本に定着したのは戦後のことと思われがちだが、どうも、そうではないらしい。恋人たちのクリスマスのルーツは日露戦争の勝利にあるという◆“羽目をはずしていい日”として認識されたのは明治39年。前年に大国ロシアに勝ったことで、開放感と喜びが社会に満ちあふれた。信者でなくとも浮かれる空気が広がる◆この頃から「クリスマスプレゼントは何がいいか」といった新聞記事も出る。どんどん大衆化は進み、昭和初期には東京のダンスホール、ホテル、カフェで踊り酔う市民の姿がみられた。最近出た堀井憲一郎の『愛と狂瀾(きょうらん)のメリークリスマス』(講談社現代新書)に教えられた◆戦後のにぎわいは言わずもがなだが、イブに誰と過ごすかが盛り上がったのはひと昔前。今の若者は恋愛願望が薄れてきたとされる。直近の内閣府調査で20、30代の恋人がいない未婚者に聞いたところ、4割弱の人が「恋人は欲しくない」と答えている◆賃金格差と将来不安。このご時世、わざわざ時間とお金をかけての消費は好まれないのだろう。ネットの世界でつながったり、気の置けない者同士でというのもいい。でも心にポッと火を灯(とも)すような相手と過ごす時間もいいものだ―。そう思うのだが、これも還暦世代のおせっかいかな…。(章)

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