安倍政権は2018年度予算案を閣議決定した。一般会計総額は97兆7128億円で、6年連続で過去最大を更新した。急速に進む少子高齢化への対応、激変する安全保障環境への備えなどの課題に適切に対応しつつ、財政健全化への道筋を示すことが求められたが、及第点とは言い難い内容になったことは残念だ。

 社会保障関係経費への切り込みや地方交付税の抑制が不十分だった。さらに、国内の需給ギャップは解消され、需要は十分あるにもかかわらず、需要を喚起する公共事業費を増やすなど必要性に疑問が残る査定もあった。冗漫な歳出が続く恐れを排除できない。

 日本の債務残高は1千兆円を超え国内総生産(GDP)比で230%超、財政状態は先進国で最悪だ。持続性に疑義を持たれれば、理論的には国債の急落、金利急騰もあり得る。

 財務当局はこうした状況を把握しているはずだが、業界団体、政治の圧力に屈する毎年の光景が、この年末も繰り返された。

 歳出の絞り込みが甘くなった背景には、税収増の見込みと低金利がある。18年度の税収について財務省は好調な企業業績などから59兆790億円に上るとみている。バブル景気だった1991年度の59兆8千億円以来27年ぶりの高水準だ。

 これに加え市場金利の低下が国の負担を軽減する。国の借金の利回りである国債の想定金利について財務省は過去最低の1・1%とした。この結果、過去の借金の利払いや償還に充てる国債費を抑えることができた。ここは日銀の大規模金融緩和に負うところが大きい。

 こうした状況で生じた余裕は財政再建に振り向け、少しでも借金を減らすべきだったが、逆に財政規律が緩み、歳出規模が膨張してしまった。新規国債発行額は33兆6922億円と、高止まりしたままだ。危機感が欠如していたと言わざるを得ない。さらに言うと、税収増を前提にした歳出増は危うい。景気が減速し税収が見込み通りに増えなければ、国債の増発に追い込まれる。

 今回の予算編成で最大の焦点となった診療報酬では医師らの人件費などに充てる本体部分が0・55%増で決着した。この結果、国費約600億円が投入されるほか、保険料や窓口負担も増える。当初こそマイナス改定を目指した財務省だが、日本医師会と同会の支援を受ける自民党の前に早々と白旗を揚げた。医師らの待遇改善を図る必要性が厳密に吟味された形跡はない。

 地方交付税についても、自治体の基金残高が21兆円を超え過去最大となっていることから、財務省はその分を反映した交付税の削減を目指したが、阻まれた。基金を財政再建に活用しない明確な理由は示されていない。

 安倍晋三首相は、消費税増税による増収の使途を借金返済から教育無償化に変更、公約だった借金以外の歳入で政策経費をどれだけ賄えるかを示す基礎的財政収支の20年度黒字化を先送りした。

 今回の予算編成は、同収支黒字化へ向けた取り組みを仕切り直す意味もあった。景気拡大が戦後2番目の長さで続き、大幅な税収増も見込まれるという状況はそうそうあるものではない。借金返済を確実にする行程を描くせっかくの好機を逃してしまった。このつけは確実に回ってくる。(共同通信・高山一郎)

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