今後の医療と介護の在り方は、超高齢社会となる2025年を視野に入れ、見直していく必要がある。人口の多い「団塊の世代」全員が75歳を迎え、後期高齢者の仲間入りをする。国民の5人に1人だ。慢性疾患を抱えがちで、いったん病気になれば重症化しやすい。そんな高齢患者が急増するのだ。医療・介護費は激しい勢いで膨張し、国の財政を脅かす。限られた財源、人手、施設を効率的に運用することは喫緊の課題と言える。

 18年度予算編成で焦点の診療報酬と介護報酬の同時改定を巡る政府内調整が決着した。改定は診療報酬が2年ごと、介護報酬が3年ごと。6年に1度、時期が重なる。18年度の同時改定は「25年問題」に備える上で実質的に最後の機会となる。

 診療報酬は全体で0・9%減と決まった。薬価の大幅引き下げで費用抑制を図るものの、医師らの技術料や人件費に当たる「本体部分」は0・55%のプラス。介護報酬も0・54%引き上げる。

 わずかとはいえプラス改定は保険料上昇や自己負担増、税負担アップにつながるが、今回の報酬引き上げは妥当だろう。長年にわたる社会保障費の抑制策で、医療・介護の現場は疲弊が著しいからだ。特に介護分野は職員が低賃金にあえぎ、人手不足が常に問題となる。過労死と隣り合わせの病院勤務医の過剰な労働環境も改善が急がれる。

 報酬が少ないためにサービスの質が低下したり、地域の病院や介護事業所の経営が傾く事態に陥ったりすれば、地域住民は安心して暮らせない。

 ただし、プラス改定に至る今回の経緯が不透明だったのも事実だ。財政規律を重んじる財務省は、いずれの報酬も大きく削減するよう主張。これに反発した医師会や介護団体の意向を受けて自民党が巻き返し、最終局面では首相官邸がプラス幅を積み増した。

 10月の衆院選で、票とカネの両面で自民党を支えた業界に対し、政権が「恩に報いた」結果なのだという。ずいぶんと有権者をばかにした話だ。皆保険の維持に国民が負担している保険料も税も、政府や与党のポケットマネーではない。政権との「距離感」で報酬の増減が左右されるのは不健全ではないか。透明性を欠く改定率の決め方は今回限りにしてほしい。

 政府は年明けから、個別の診療やサービスに対する報酬配分の議論を本格化させる。超高齢化が進むのだから、患者を「治す」だけでなく、日常を「支える」形の新しい仕組みへの転換が急がれる。大事なのは在宅でも必要なサービスをいつでも受けられる安心感だ。

 病院や介護施設に依存していては高齢者の増加に追い付けない。重症患者向け病床を思い切って減らし、リハビリを通じ在宅療養に戻れるよう回復期病床を増やす見直しが急務だ。諸外国に比べ長すぎる入院期間を短縮する努力も求められる。

 最期を見守る「みとり」も在宅でというケースが多くなっていくだろう。今は7割以上が病院で亡くなっているが、多死社会の到来で病床不足は必至だ。認知症の人も増えるから、身近な「かかりつけ医」の役割が大きくなり、24時間態勢の訪問介護などとの密接な協力が欠かせない。

 医療と介護の役割分担と連携強化を併せて進め、超高齢社会に合わせた制度への再構築を急ぐべきだ。(共同通信・内田泰)

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