あすはもう冬至。わが家では風呂に柚ゆ子ずを浮かべて「柚子湯」を楽しむのが毎年の習いになっている。風邪を封じる効果があるとされ、その年をなんとか無事に過ごせたとの感慨に浸ることにもなる◆柚子は、外見はごつごつして器量は悪いが、さわやかな強い香りが持ち味だ。果汁は果実酢として調味料になり、柚子の名も柚酢(ゆす)からきているという。古くより「木守(きまもり)」の風習がある。実った果実を全部収穫するのではなく、てっぺん付近に一つ残した◆柿が有名だが、「木守柚子(きもりゆず)」というのもある。まるで木を守るように残る姿は、来年の実りへの祈りが込められているとも、恵みを自分だけのものとせず、小鳥にもおすそ分けするともいわれる。一つ残る木を見かけると、心優しい持ち主に触れるようで温かくなる◆他のことを思う「利他の心」にも通じる。今年を振り返れば、私利私欲がむき出しになった出来事が多かった。神奈川県座間市で9人の切断遺体が見つかり、27歳の男を逮捕。動機として「金銭目的」を挙げた。これなど身勝手の極みだ◆海外に目を転じれば、自国第一を唱える米大統領に振り回され、北朝鮮の崖っぷち戦略にこぶしを握りしめた。「他によかれ」の心があるからこそ、和を保てる。年の暮れに思うことである。〈木守柚子一つ灯ともりて賢治(けんじ)の居(きょ)〉松本澄江。(章)

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